承前。
## 3. 各コンテンツ初期との比較
それでは、各コンテンツの最初期、それらの知識やテクニックが必要であると見抜いて習得したプレイヤーは、いったいどのようにしてそれらを習得したのか。
特別な才能を持つ一部のプレイヤーだけがそれを見抜いて、現在と同じようにプレイヤー間を伝播してアストルティアに広まっていったのだろうか。
それは違う。
それぞれのコンテンツではかつて、プレイしていればある程度自然に身につく知識が、かなり多かったのである。
(一部のプレイヤーが発見し、公開してくれたおかげで広まったテクニックの存在も否定はしないが。)
### 3.1. 防衛軍の初期
防衛軍の事例の分析で挙げた点については、防衛軍が実装された当初は、オートマッチングで参加していても自然に学べることであった。
ところが今日においては、よほど注意深いプレイヤーでなければ、獅子門防衛軍にオートマッチングでいくら参加しても、これらを自然に体感して学ぶことは非常に難しいと思われる。
獅子門の防衛では、ある程度の段階で橋を渡って北上し、大ボスを殴り始めたらそのまま倒しきるまで殴り続けることがある程度スタンダードになっており、実際にその方針で倒しきってしまう例もかなり多いためである。
南にとどまってボスを待つとか、鐘を丁寧に処理するとか、大ボスはここで鐘を呼ぶのでキャンセルするとか、そういうことを考えて火力を緩めるのは、状況によってはむしろ討伐の失敗につながってしまう可能性すらある。
この状況では、新しいプレイヤーが防御的な視点を持たないまま防衛軍に「慣れて」いってしまうのは当然である。
こうして、防衛軍を初期から遊んでいるプレイヤーと、楽に討伐できようになってから遊び始めたプレイヤーとの差は埋まらないまま、後者のプレイヤーの成長機会は奪われてしまうのである。
### 3.2. 相撲システムの初期
ガルドドン戦の事例の分析で挙げた点、つまり相撲システムを利用した戦闘の経験についてもそうだったと聞いている。
相撲システムはDQXの戦闘において根幹をなすと言っていいほどの基本的なシステムで、当然バージョン1のときから存在している。
根拠の薄い伝聞になってしまうが、かつては、メインストーリーが一通り終わってもまだプレイを続けて、戦闘系のコンテンツにトライする程度のプレイヤーであれば、相撲を利用した戦闘の経験は自然に身についたそうである。
それが今では、ほぼ最新の、ほぼ最高難易度のコンテンツでしか学べないものになっている。
ではそこで学べばよいかというとそれもまた厳しい話で、「相撲周辺のテクニックを今までほとんど意識してこなかったプレイヤーが、ガルドドン戦で相撲を学ぶ」というのは、筆者には到底現実的な話には思えない。
相撲を全く意識したことのないレベルのプレイヤーにとって、ガルドドンをはじめ聖守護者各ボスを相手にすることはほぼ間違いなく時期尚早である。
相撲に慣れたプレイヤーであれば、あとはそのボス特有の立ち回りだけを習得すればよいところ、相撲に慣れていない場合はそのあたりの基礎的なテクニックも同時に学習する必要がある。
「そのボス特有の立ち回り」だけを習得するのも最新コンテンツとなれば当然大変なのだから、これはどう考えても負荷が高すぎるのであって、プレイヤースキル向上のステップとしては不適当である。
こうして、DQXを初期から遊んでいるプレイヤーと、相撲がなくてもある程度遊べるようになってから遊び始めたプレイヤーとの差は埋まらないまま、後者のプレイヤーの成長機会は奪われてしまうのである。
続く。