突然、「門」が開いた
アストルティア大陸全ての空に謎の「門」が現れ調査も警戒もする間もなくそれは開いた
知らせを聞いた勇者姫が盟友と共に城下町に駆けつけると、そこは既に地獄絵図が広がっていた
ついさっきまで平和を謳歌していた住民達は「それ」によって無惨に食い散らかされて息をしているモノはいない
こいつら…あの「門」から現れたのか?
いつも頼もしい盟友の声が恐怖にひきつっている
そのようね…よくも町の皆を!
腰の剣を抜きつつ応える勇者姫だが、この惨状に手が震えているのを自覚していた
いくわよ!
応!敵討ちだ!化け物共め!
戦い始めて直ぐに異変に気付く
衛兵達はどうしたのだろうか?それに賢者も…
嫌な予感は的中していた…城から悲鳴が聞こえる「それ」は城までも襲っていたのだ
父は?母は無事だろうか?奴等に襲われてしまってはいないか?胸の中を不安がぐるぐるめぐるが戦いをやめる訳にはいかなかった…
グッ!こいつ達やたら強い!
ええ!それに数が多いわ!倒しても倒しても現れる!
勇者姫は「それ」を一網打尽にすべくギガスラッシュの構えを取る!何も合図をしていないのに盟友も同じタイミングで構えている、長い間激戦を共にしてきた阿吽の呼吸にこんな状況ながら安心感を覚えた
バリバリバリ!
ふたりのギガスラッシュは数百の「それ」を滅ぼした、砕け散る破片に、見知ったモノを見てしまった勇者姫はギョッとした
コロコロコロ…
恐らく「それ」が咥えていたのだろう、小太りの老賢者の頭が転がり落ちた
…!
自分の心を支配しているのが怒りなのか悲しみなのかそれすらわからないまま剣を振るう
今、この場で戦えるのは自分と盟友だけ…辛く厳しいが声をかけあい気持ちが萎えないようにしていた、が…
盟友から返事が来ないのに気付いた勇者姫がチラリと振り返ると…頭の半分がなくなった盟友が内臓を貪り喰われていた
もう、わたしひとり…頼りの盟友を失ったショックはほんの少しだが勇者姫の気持ちを鈍らせた
ザグリ
鋭いツメの一撃は勇者姫の左腕を盾ごと持っていった
!
もう、全身傷だらけで、盟友も片腕も失い、出血は止める隙も無い…
ああ、疲れたなあ…痛いなあ…お父様やお母様は無事なのだろうか、それとも…
沢山の化け物を斬った剣は血と脂で切れ味が落ちる、迂闊にも雑に振るってしまった剣は化け物に食い込み直ぐには抜けない
…
慌てて引き抜こうとしても焦りは体を鈍らせる
!!!
背中に痛みを感じた、化け物がツメをたてたのだろう、激痛に剣を離してしまったが、もう、気にならなかった、腹に化け物が食い付いていて、びっくりするほど血が吹き出しているから…
守れなかったなあ…この世界…
せめて空を、青空を見たかったが、視界の全ては自分の血でまみれた化け物だらけだった
そして、世界はー
…という夢をみたんですよ(笑)面白くないですか?
クロ〇ズ!黒いよ!
それは無いわね!黒いわ!
笑う勇者姫と盟友と友人達が見上げた
空には「門」が現れていた
おしまい