コンビニのバイトが終わった深夜
クレーマーのDQNのおかげで身も心もクタクタの俺は夜道を急ぐ
道中の自販機の処にうずくまっている女性がいた
OLさんらしいスーツ姿の…どうせ酔っぱらいだろうし面倒くさいから知らんぷりを決め込む
…筈がついつい声をかけてしまった
「あの…大丈夫ですか?」
ありがとうございます 大丈夫です 少し呑みすぎただけで
ぐったりしている女性をほおっておいて何か酷い目にあったら、って想像してしまった俺はそこで立ち去る事をしなかった
「お家は近くですか?良かったらタクシーを呼びましょうか?」
ああ、本当にありがとうございます
顔をあげた女性に目鼻口が無かった
女の子みたいな悲鳴をあげながら俺は逃げた
逃げて逃げて必死で逃げて
ガキの頃から通っているラーメン屋に飛び込んだ
「おぅど~したィざれ坊?」
店主のオヤジの顔を見て生き返った心地だ この店が深夜まで営業していて助かった
俺はとりあえずお冷やを貰ってからオヤジにさっきの出来事を話した
「~な訳で必死で逃げてきて」
「おいおい、マジかよ~…ウチから近いじゃねぇか」
オヤジの顔も青ざめていた そりゃそうだ
「こりゃ安心して出前もできねぇなオイ?」
「オヤジさんは大丈夫だろ?そのツラじゃお化けの方が逃げらぁ」
必死すぎて気づかなかったけれど俺以外にも客がいたようだ ハタチ越えた男がお化けが恐くってラーメン屋に逃げ込んだって冷静になって考えると恥ずかしいかもな? そんなコト思っちまった
「いや、恥ずかしい事はないと思うぜ?いくつになっても恐いモンは恐いさ」
「あぁそうだなぁ ところでざれ坊!なんか食って行くかい?」
「ああ、えっと…ギョウザとビールを」
おぅよ ビール瓶とコップを俺の前に置いてオヤジは厨房でギョウザを焼き初めた
一杯目のビールを一息に飲み干しておかわりを注ぎながら なんか変だって気づいた
俺、お化けが恐くて云々は口に出して言ってない
それに オヤジは俺の事を大人になった今でもごんちゃんって呼ぶのだ
ーーーとオヤジが振り向きもせずに応えた
「あぁ、呼び名を間違えちまったか」
「初歩的だが致命的なミスだ」
客が応じる
「でもアレだ 今どき見ず知らずの女の人に声かけるなんざ立派なモンだ」
「そうだな 立派だ」
「こんないい奴を〇さなきゃならないなんてなぁ世知辛いなあっちもこっちも」
逃げようにも俺の足元にはさっきの女性がしがみついていたし
客の人も隣で俺の腕をガッチリ掴んでいる
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次の日の朝 コンビニの近くにある自販機の横にバックパックが落ちていた
親切な人が交番に届けたかも知れないが持ち主はもうこちらにはいないだろう