「いやあの」
許されない。
──ですよね!?
「……いや、そんなことはないんじゃないかなー……(小声)」
どのくらい許されないかというと、クリミア半島でプーチンさんとオバマさんがナイチンゲールのコスプレをして合同握手会を開くくらい許されない。
「いや、そういう香ばしいネタはちょっと」
プーチンさんがいえーすって言って
オバマさんがうぃーいいぃって言って
二人合わせてきゃあああああん☆ って可愛くハモっとけば、たぶん色々と平和になると思います。
「それより先にKGBとCIAの合同作戦で君が消される方が早いんじゃないですかねー」
※ 「落ち着きましたか?」
申し訳ございません。
私としたことが。
つい。
闘戦聖母さまのメットをふんづけたらノコノコみたいににゅっと手足が収納されるのかなあ、なんて考えてそうな不埒者の存在が許せず。
つい。
「何故だろう、全存在をかけて上限開放を阻まなくてはいけない、そんな気がする」
許されざるよ。
「会話が噛みあわねえー」
そもそも聖母さまのムービーシーンがないのは手抜き、とか言ってる世間の連中はわかってないと思うんですよ!
「えっ、そんなこと言われてんの、私。初耳なんだけど……(動揺)」
あれですよね。
その装備になる際にバンクシーンがあるからですよね。
変身シーン。男の子の憧れの変身シーンですよ!(ぐっ)
「いやいやいやいや。しないし。これ支給された職場の制服だし」
原価200円、希望小売価格5980円(税込)くらいのプラでできた小物を掲げるんですよね!
で、光に包まれて全裸的なシルエットになるんですよね!
サービスカット! さすが聖母さま! 話がわかる! かっこいい!
よっ! 販促王!
「いや、そりゃこんな身体のラインにぴったり合った制服を着ようと思ったら、通勤時の私服は確かに一度脱ぎますけど、別に全裸って訳じゃ……(ごにょごにょ)」
後ろで流れているBGMもかっこいいですよね! 私見たことあります!
「あるの!? 私そんな撮影した覚えないのに!?」
ガショーンガショーンって足→胴体→腕→頭って順番でジョイント合体するシーンは80年代テイストで、決して古びない勇気がそこにあるって毎週確認させてくれるいいものだと思うんです!
「待って! ちょっと待って! 私最初五体バラバラになってる設定なの!? どうなのそれ!?」
(聖母様、セットの袖で待機しているADとマネージャーを振り返り、ADとマネージャーが飛び出してきてまあまあまあと宥める。画面に監督の手が被さってきてカットカットという声のあと、ブツっとブラックアウトする)
※ 「落ち着きました」
お気持ちお鎮めいただきありがとうございます。
聖母さまのお怒りはごもっともです。
「……そう、まあ、ええ、わかってくだされば、それで……」
仰る通り、そう、確かに時代は合体ではなく高価なワンオフ機に実験的な着想でピーキーに調整された癖の強いアタッチメントを付け替えするのが主流ですよね。
「……えっ」
合体ロボはパーツごとの販売なんかしたら暴動が起きますけど、ワンオフ機はそれ自体でロボですから。
単品で売れますもんね。さすが聖母さま。
「おかしい。何かがおかしい。しかも褒められてる気がしねえ」
外付けの可変飛行形態とか超々遠距離砲ユニットは別売。
本体価格の千円引きで販売することで、クリスマスプレゼントに超合金ロボを買ってもらったお子さん方のお年玉を狙い撃ち。
底なし沼のおもちゃ業界。しかも初回限定版がみっつあって、それぞれ色違い。あとCDがついてくる。CDの中身は全部いっしょですけど。
「外道そのものじゃねえか」
ちなみに本体とアタッチメントをコンプリートすると色違いの本体がもれなく貰えるんですよね。
本編16話でテコ入れにパワーアップイベントが突っ込まれますけど、尺の都合で何の伏線もなく冒頭で聖母さまを庇った恋人が不遇の死を遂げ、彼女の飼っていたハムスターが誘拐された際、怒りで聖母さまが金色に輝くあのイベントです。
なお、そのハムスターは救出されたあと、薬物所持疑惑をかけられたくらいで後は全く話に出てこないんですけど、まあそれはそれとして、同じ金型で黄色のペンキを塗装するだけですから、原価に開発費が含まれず、非常に利益率の高いキャンペーンにできそうです。
さすが聖母さま! コレクターの習性を知り尽くした、実に巧妙かつブリリアンツな販売戦略です! 完璧ですね!
「駄目だこいつはやくなんとかしないと」
※「「文字数が足りないのでこれで! ありがとうございましたーーー」」
(仕事中に何やってんだろう俺)