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悪徳おじさん

ギーリ

[ギーリ]

キャラID
: YW317-375
種 族
: 人間
性 別
: 男
職 業
: 賢者
レベル
: 94

ライブカメラ画像

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ギーリの冒険日誌

2014-11-17 16:07:56.0 テーマ:その他

王妃は来客に背を向けていた

 育ちのよさを感じさせる明るい配色のカジュアルな服装だ。
 そこは王族の私室で、つまり俗世で王妃を演じることから解放されているはずのスペースなのだった。

 王妃は来客に背を向けていた。
 公務でないなら愛想を振りまく必要もない。
 それは王妃の、現実へのささやかな抵抗なのかも知れなかった。
 意識的にか、無意識的にか。外目から判じるのは憚られた。
 その背中が、あまりに小さく見えたから。
 無慈悲だと思われたくなければ、相手の表情が見えないような角度にある応接用の椅子にこうして座っているしかない。

 無慈悲だと思われたくなければ。
 だが、そんなことを王族以外の一体誰が気にする? 私を含めた野卑な冒険者たちの誰が? 私たちは大股にどかどかと城のあちこちを走り回り、秘されている場所にすら隙あらば立ち入ろうとしている。
 王女殿下のバルコニーは完全に彼らの発着地点となりおおせた。具体的な戦略と作戦を立案する賢者の司令部と、それに従事する冒険者たちの貢献度に応じた褒賞が用意された宝物庫と謁見の間を結ぶ経路に、このプライベートルームの入り口は面している。

 彼らは足音を立てて行き来する。バルコニーという塹壕と、後方司令部の間を行き来するのに行儀は求められなかった。
 王妃にできるのは背を向けることだけだ。

 なるほど、謁見の間がある二階より上は、本来プライベートな空間だったのだろう。だが、今はそうではない。そこまで犠牲にしてでも維持しなくてはならない戦線があり、彼らはそれを支えている。
 優雅で華美な内装のここは、いまや野戦基地と化していて、その選択をしたのは、王妃自身であり、夫たる国王なのだ。
 王妃にできるのは背を向けることだけだ。他に一体何ができる?




※ 王妃の視線の先にあるものは何か。

 暖炉にくべられた薪、赤々と燃え盛る炎か。
 それともその暖炉の上にある絵画、威風堂々としたグランゼドーラ城のたたずまいか。
 背中からは少し頭を垂れているようにも見える。つまり、項垂れているようにも見える。

 絵画を見ているのであれば、上目遣いにそれを見上げていることになる。
 本来のそれより高く、かつてのそれを見上げていることになる。
 それは心象的な立場の表れなのかも知れなかった。

 暖炉の中の炎は赤い。おそらく王妃の面差しをも赤く染め上げているだろう。それが元はどのような血色であったにせよ。
 この部屋は広く、そして開け放たれている。
 野戦基地であるこの城で人の出入りが間断なく続くということは、それに伴って3階という高層の冷たい外気の循環が切れないということと同義だ。
 炎を見ているのだとすれば、そうした寒さゆえのことかも知れなかった。

 火に両手をかざしたいと思うだろうか。さすがにそんな姿は見せられないとなけなしの矜持を振り絞っているのだろうか。
 いずれにせよ、火のそばに近寄ることすらせず、ただ、王妃は立っている。

 もちろん、何も見ていないかも知れない。
 虚空をぼんやりと見ているかも知れないし、床にまで視線が落ちているのかも知れない。
 そうであったならば、たぶんそれが一番救いがない。




※ 王妃は来客に背を向けていた。

 或いは王城が野戦基地と変わらない有様となっている現実そのものに背を向けているのかも知れなかった。
 誰にそれを責められる? 年端も行かないあなたの娘は居室まで冒険者たちに晒して四六時中彼らとの作戦会議や陳情に応じているというのに、とでも言うのか。言うとして、では、それを他ならぬ娘自身以外の誰にそれが許される?



 こういう見方もできる。
 彼女は好きにプライベートを過ごしているだけだ。
 すっかり弱った体で寝込んでしまうこともできるだろう。
 人目につかない部屋の隅で呆けてしまう選択肢だってある。
 何も、わざわざこの部屋の入り口から見てすぐわかるところに立っている必要などない。



 これは、彼女の抵抗なのだ。
 彼女はいつもそこにいる。内省がちで、思慮深く、自分にわかることは何もないしできることもないと彼女は言う。
 しかし、彼女はそこにいることからだけは逃げない。
 この現状を受け入れてしまうことからだけは逃げない。

 彼女は来客に背を向けている。
 声をかければ、彼女は振り向く。
 ささやかな抵抗を諦めているという見方もできるし、或いは彼女はそこにそうして立って、誰かの語りかけに応じる用意を常に怠らないという見方もできる。

 彼女は来客に背を向けている。
 打ちひしがれることはあったが、決して折れず、彼女は立ち続けている。



 彼女は来客に背を向けている。
 いつかもたらされる何かの報を、そこで、誰の目にもはっきりとわかるそこで、そんな風に待っている。
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