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ギャンブルクイーン

シラベ

[シラベ]

キャラID
: ZZ714-726
種 族
: 人間
性 別
: 女
職 業
: まもの使い
レベル
: 133

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シラベの冒険日誌

2023-02-26 10:00:05.0 2023-02-26 10:05:50.0テーマ:その他

演劇「魔王の玉座」-序幕『選書』其のニ #プレイヤーイベント

「コトッ」
幸せな時間を予感させるこの音が、私は好きだ。
配架もそろそろ終わる。
図書館はもう閉館し、
他の仕事も一通り終わっていた。

「蔵書の点検は明日でいいかな」
心の中でそう呟いて、ふと時計に目をやると、
夕刻の鐘が鳴る時刻を指そうとしていた。  「いい時間だし」
私は書架の通路を静かに歩きながら、
カウンターに向かう。

カウンターにつくと、
母が情報端末を操作していた。

「あらあら、もうそんな時間?」
作業に集中していたらしい。
母は私に気がつくと少し驚いた顔をした。

「そろそろ鐘がなる時間だよ。
 いいの、見つかりそう?」
私が尋ねると、母は腕を前で組んで、
再び端末の画面に目線だけ流した。

「そうねぇ、、
 古書で有名なものは前のイベントで
 ほとんどお披露目しちゃったし。
 まだこれっていうのが見つからないわね。
 今日はこの辺にして、そろそろ帰りましょうか」
そういうと母は、
カウンターの下から手荷物を取って、
帰り支度を始める。

母に背を向けてカウンターにもたれながら、
私は図書館の天井を見上げていた。

「古書、か」

私ならどんな本を選ぶだろう。
古い時代の書物には、
いまは忘れられた人々の記憶が込められていると、
私は思う。以前から私は選書をやってみたかった。

選書は図書館を訪れる人に、
司書が薦めたい本を選別するもので、
毎回ジャンルや季節などのテーマが定められている。
ただ王立図書館ともなると、
選書は読者の地位や国風にあったものを
選ばなければならない。

それを賞賛する人もいれば、
さすがは王立図書館ともなると、
などど揶揄する人もいる。

王国では毎年この時期に
「黄昏の平和《トワイライトピース》」
という式典が催される。

人間界と魔界の要人が国賓として招かれ、
各界の国政状況の報告や法の見直し、
新たな施策の立案などが行われる。

その後、
各界の王による『平和の誓い』が終わると、
国は一気にお祭りムードになる。

町では各界の名産品バザーや飲食店が立ち並び、
サーカス団やパレードが大通りを行進する。
選書した本は、そんなお祭りの中、
図書館でひっそりと公開されるのだ。 「図書館を飾ったり、
 もっと目立つところでお披露目したらいいのに。
 そうしたら、きっとたくさんの人に、
 本のよさを知ってもらえるでしょ?」
帰り道、私はふとそんな不満を口にした。

「あら、私はいつも言っているでしょう?」
母はニコニコしながら、
私にいつもの言葉を続ける。

「本は目と心の声で読むものよ」
「本は目と心の声で読むものです」
母と私の声が重なり、
お互いの顔を見て、二人で笑った。

「それにはあの静かな空間がとっても大切なの」
何かを続けて言おうと開いた母の口が、
スッと閉じて、微笑みに変わる。

「それは、あなたもよくわかっていることね」
そういうと母は、ただ遠くを見つめていた。
その前を私が歩く。

母の言葉には、
不思議な魔法が込められているようで、
私は、そっと背中を押された気持ちがした。

大通りを避けた民家が立ち並ぶ煉瓦造りの道。
この道は、帰る時にはいつも人通りが少ない。
母と私のお気に入りの帰宅コースだ。
まだ暖かい秋の夜風が街路樹の葉の香りと、
サラサラと心地よい音を連れてくる。

「ねぇ、お母さん。」
私は立ち止まった。
ずっと話したいことがあった。

司書には、千の知識が必要と言われている。
それがどれだけ大変なことか、
母の背中をずっとみてきた私は知っている。
下手なことをすれば、図書館の、ううん。
母の仕事に傷をつけてしまうかもしれない。
それが、ずっと怖かった。
それでも、その時の私は、
伝えずにはいられなかった。

きっと、魔法にかかっていたんだ。
空に浮かぶ月がとても綺麗で、
そよそよと流れる夜風が私の髪を揺らす。

母の方を振り返ると、
まっすぐ母の瞳を見つめて、
私はその言葉を口にしていた。

「私、選書をしてみたい。」
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