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ギャンブルクイーン

シラベ

[シラベ]

キャラID
: ZZ714-726
種 族
: 人間
性 別
: 女
職 業
: まもの使い
レベル
: 133

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シラベの冒険日誌

2023-03-16 10:53:07.0 2023-03-18 12:05:18.0テーマ:その他

演劇「魔王の玉座」-序幕『選書』 其ノ四 #プレイヤーイベント

「...ぇ?」
姫は私の意外な答えに声を漏らした。
母に気持ちを伝える直前、私は聞いた。
か細く小さな声。心に深く染み渡るような声。
それなのに何か私を突き動かすような、そんな声を。私は確かに聞いた。女性の声だった。

私は色んな本と出会った。
それらの本を目に穴があくほど何度も読んだ。
数千冊は下らない。
時には寝不足が祟って、
授業中におかしな幻覚を見ることもあった。
それでもこんなことは、あの夜が初めてだ。

「聞こえたんだよ、確かに」
「聞こえたって...何がですの?」
「声。そう、誰かの声がしたの」 「声...。ってあなた、まさかそれだけのことで?」
呆れた、と。姫の顔にはそう書いてあった。

「幻覚だけじゃなく、とうとうそこまで」
姫の哀れみの視線が私に向けられる。
「まってまって、そんな可哀想な子を見るような目で同情しないで!」

すると姫は、私を説き伏せるがごとく、
間髪を入れずにこう返した。

「いくら夜だからって、街にはあなた一人しかいないわけじゃありませんのよ」
「ただの物音かもしれませんし、人の立ち話が聞こえただけかもしれません。もしかしたら、お母様の声だったかもしれません」
「『声』なんてこの街にどれだけ溢れているとお思いですの?」

姫の言うことはもっともだ、と私も思う。
私自身、あれは幻聴だったのかもと
何度も思い返していた。

「姫の言いたいことはわかるよ?」
「でも音とか声みたいに外から聞こえてない感じ」
「頭の中に直接聴こえる、みたいな不思議な声なの」「外からじゃない声?」

そう言うと、姫は急に立ち止まってこちらを振り返った。彼女の顔は心なしか生き生きとして見える。
私は、しまった。と思った。 「それは魔術の類かもしれませんわ!」
姫は目を輝かせながら、真面目な顔でそう言った。
彼女は生粋の魔術オタクだ。
私が知る中で彼女の欠点をあげるなら、
唯一そこだ。

彼女は摩訶不思議な現象が大好きで、
それらはすべて魔術の力だと信じている。
反対に、私は魔術をまったく信じていなかった。
魔術は気の遠くなるような昔に失われた技術体系だ。それが今も息づいているなんて、
遠いおとぎ話のような非現実的な事だと思う。

ただ、彼女たち魔族には、
外見以外に私達人間とは違う特徴があった。

それは、彼女たちの体内に流れる血液の構成物質。
魔族の血中には、
『魔素』という不思議な物質が含まれていて、
魔術を使う時、その手助けをしてくれるらしい。

歴史の中で忘れられて、
今は誰も使えない不思議な力。
それが今でも、こうして彼女の中には残っている。
そんな彼女がその力に憧れているなんて。
「皮肉な話ね。」
学校の講義で習った時、私はそんな風に思った。

私は魔術を信じていない。
けれど、姫の話は別だ。
彼女の話はどこか知的でユーモアに溢れていて、
私は好きだった。
・・・ただ。

「ですから、その声の主はきっと高位の魔術師に違いありませんわ」
「念話は魔術の中でも繊細な魔力の制御が必要で、
って聞いてますの?」
姫が『それ』を語り始めてから、
もう数十分が過ぎようとしている。
姫がそれを話しだすと、とにかく長い。
私が聞いているのか気になるのは、
話の終わりが近い証拠なのだけれど。

「聞いてる。姫、もしかしたらその声ってさ」
少しの悪戯心が私を動かした。
「ただの物音や人の立ち話が聞こえただけ、かもしれませんわよ?」
姫の目の前に顔を突き出して、
私はわざと姫の口真似をして答えた。

姫の頬はぽっと赤くなり、
目が正気を取り戻したように少し見開く。
その吸い込まれそうな蒼い瞳に、
ニヤリと悪戯顔の私が映っていた。

「そ、それは、例えばの話をしただけですわ」
そう言うと姫は横を向いて、
少しふてくされたようにぼそっと、
「あなたは魔術のお話は信じていませんものね」
と呟いた。

「うん、信じてない」
私はすぐに返した。

「でもね、私、姫のお話は大好きだよ」
「非現実的だけど、あったらきっと楽しいよね♪
そんな不思議な、魔法みたいなこと」

姫はふっと私の方を見ると、
顔を赤らめながら、嬉しそうに笑って答えた。
「はい、わたくしもそう思いますわ」

その時、私もきっと笑っていたんだと思う。

「一度、お母さんにも相談してみる」
別れ際、私は姫にそう告げて、図書館へと向かった。
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