???「誰か・・・助けて」
-朝-
また夢を見た・・・
今日は休みだから、いつもより遅く起きられて、体が軽い。学校がないことも関係しているだろうが。
一階におりて朝食をむしゃむしゃ食べながら考えた。
夢の人物は誰だった?
今度は女だった。昨日の夢の人物がすけくんだとしたら・・・私が知っている人の可能性が高い。
あの声は・・・!
私を影でコソコソ笑っている集団の、発端の女だった。
名を加藤芹那と言う。
ある日私が定期テストで満点をとったとき。
「あんた、私たちのことバカにしてんでしょ。頭いいからって威張ってんじゃないよね?」
と言ってきた。私の顔が自慢げに見えたのか知らないが、いつも無表情なので誤解されたのかもしれない。
それに対して「威張ってないしバカにはしてない。ただ、私は勉強をしただけ」
と言うと、女の顔は明らかにイラついていて、その日からだ。
そんなにムカつく事を言ってしまっただろうか?
私は正論を言っただけだ。
このことに対してはどうにも納得が出来ない・・・
じゃあ、何で泣き叫んでいた?
何か理由があるのかも。
ー!
ここで私はあることに気づいた。
あの夢が加藤さんの心を表しているのであれば、すけくんは・・・?
たしか・・『あんなやつ・・・あんなやつ・・・・』と言っていた。
ということは。すけくんも何かしらあったんじゃないのか。
一方的に恨むような、そんな事があったんじゃないか。
だとしたら・・・昨日言いかけた理由がわかるかもしれない。
あのときは私に『悩みがあったら言ってね』と言っていた・・その後に『ぼくも・・・・』が続くということは、やはり何か・・。
私は、すけくんのことをなにも知らない。知ろうともしないし、すけくんもそんな事教えてくれない。
なのになんで?
私にわざわざ言う必要があっただろうか。気づいてほしいという信号を送る必要があっただろうか。
話す相手が私しかいないから、私だったのだろうか・・・。
朝食を食べ終わると部屋着のジャージに着替え、勉強をしに二階に上がる。
どこにも出掛けなんかしない。
どうせ私のような暗い人間が街にいたって、煙たがられるだけだろう。
勉強なんてしたくないけど、私の価値が証明できるものはこれしかない。
ボサボサの髪の毛、荒れた肌、黒縁の眼鏡。
今日は休みなのでセットをしていないこともあるが、
どう見てもとても価値があるとは思えない。
テストの点数だけが私の存在価値。
こんな風に思わないと生きてなんかいけない。
・・・数式を解いていると、下からお母さんの声がした。
母「ユカー!友達が来てるわよー!」
「えー?今難しいのやってるのに・・・誰?」
ため息をつきながら髪をクシでほどいて、ジャージよりはましな地味な服に着替えて、ドアを開ける。
するとそこには、加藤芹那さんが立っていた。
芹那「あーら、酷い恰好ね。おはよう。」
「・・・・・」
どうしてここへ?私の家を知っていたのだろうか。
「どうして・・・」
芹那「どうしてって・・・すけにあんたの家の場所おしえてもらったのよ。いつも話してるから知ってるでしょって。それにあんたが夢にでてきたから謝ってもらおうと思ってきたのよ」
・・・・え?
加藤さんも私を夢で・・・それに、すけくんに私の家の場所を教えた覚えはない・・。
先生に聞いてから加藤さんに教えたのかな。
でも謝ってもらおうと家までくるなんてどうかしているが、今はそんな事どうでもよかった。
おかしな夢を解明するのが最優先だ。
「夢、見たんですか?私も実は、加藤さんが泣き叫んでいる夢を見て・・・」
少々テンパりながら伝えると、加藤さんは顔をしかめた。
加藤「はぁ~?あんたもみてんの?なにこの運命。気持ち悪い!」
ムカっ。こっちだってそうだ。
加藤「それにさ、夢であんたが私をすごい睨みつけてんのよ。腹立つ」
「そんな・・・ごめんなさい」
加藤「まああんたの本心だろうけどね~?」
「そんなこと・・!」
なにが本心なのかなんて興味ない。
加藤「いいや、別にそれはいいの。今謝ってもらったし。ただ、私が泣き叫んでいたって、本当?」
「はい・・・」
私がこういうと、加藤さんは急に顔を赤らめた。
加藤「チッ・・・その夢、忘れないと許さないからっ!」
「わ、わすれます・・」
きっと忘れることは出来ないだろう・・。
加藤「フンっ、じゃあまたね!お勉強ガンバって~(笑)」
私の対応に満足したのか、加藤さんはからかいを交えながら帰って行った。
やっと勉強に集中できる・・・そう思っていたとき―?