最近いきなり夢を見なくなった。
どうしてだろう。
もう終わったのかな・・・
でも、すけくんのことは解決していない・・・
まだまだ何か続きそうだ・・・・・。
学校では、明日と明後日に期末テストが行われる。範囲も広くなるし、やる気を出して勉強しないと。
クラスのみんなは楽しく友達と話をしているけど、内心ピリピリしているんだろう。
今日もすけくんは来なかった。
だが、小さな異変があった。
・・・加藤さんの様子が、おかしいのだ。
加藤「・・・・・・」
今日は一日中誰とも喋っていなさそうで、雰囲気を皆は感じ取っているのか誰も話しかけない。
いつもは強気なのに、どうしたのだろう?
授業の休み時間、お手洗いに行くために席を立ち、加藤さんの席の横を通ると。
加藤さんの机には、なんと教科書が・・・・・
「えっ」
びっくりして、思わず声が出てしまった。まずい。だいぶまずい。
「あっ、ごめんなさい・・・きょ、今日は元気がないね・・・」
私はこう紛らわして、急いで横を通り過ぎた。
すると。
加藤「・・・ちょっと待って」
加藤さんから呼び止められたのだ。
「な、何でしょう・・・?」
加藤「ついて来て」
殺されるんじゃなかろうかと怯えながらついて行くと、加藤さんは悲しそうな目で、こう言った。
加藤「あんたに勉強、教えて貰いたいの」
「えっ」
とてもびっくりした。加藤さんが・・・私に?
加藤「・・・別にいいでしょ」
そうぶっきらぼうに言うと、恥ずかしそうに話し始めた。
加藤「私、昔からあんたに嫉妬してたの。いつも完璧で・・・だから私、あなたをどうしても超えたくてこんな態度とってたのよ。強気に見られてるけど・・・あんたと比べたら全然弱くて・・」
そう言って加藤さんは泣き始めた。
加藤「今度の期末テストで成績が悪かったら・・・親に私の大切な服を全部捨てるって言われて・・。私の大好きなファッションを、奪われるなんて信じらんない。私はファッションが生きがいなの。だから・・・だから、今回ばかりはお願い・・!」
加藤さんはこんなにつらかったのか。だから、私の夢で泣き叫んでいたのか。
加藤「親はどっちとも医者なのに、私頭悪いから・・いい成績なんて取れるはずなくて・・。
ずっと劣等感に苦しんでた。ずっと劣等感が纏わりついて一時も離れない・・・!!!もう私を苦しめるのはやめてほしいの!!」
さぞ苦しかったろう。
私でも、そんな環境にいたら劣等感を持ってしまうかもしれない・・・。
彼女は彼女なりに、一生懸命だったんだね。
私と同じで、ファッションで自分の価値を・・・。
いや違う。
加藤さんはファッションが好きだ。
でも私は勉強が好きじゃない。
好きなものと好きじゃないものを頑張るのは、それぞれ理由が違う。
好きなものは一直線に愛しているだけ。
でも好きじゃないものは・・・何かに利用しているだけだ。
加藤さんは、私とは違う。
加藤さんは、しあわせだなぁ・・・。
「そうだったんですね・・・。加藤さんのこと、羨ましいです」
加藤「どうして?」
「好きなものがあるって、幸せですよ」
加藤「あなたは勉強が好きなんじゃないの?」
「いえ・・・一回も勉強を楽しいなんて思ったことは無いです・・・自分の存在価値を見出したいだけですよ」
その証明が、部屋にはってある大量のテスト用紙だ。
それを眺めて、ああ、私って、すごいなぁ。価値のある人間だなぁって、思うための材料。
勉強する目的なんてそれ以外ないのだ。
加藤「そうなの・・・。悲しいわね」
「はい・・・でも、加藤さんのために役に立ちそうです」
私がこう言うと、加藤さんは微笑んだ。
加藤「じゃあ、今日の放課後、私の家にくる?」
「いいんですか?」
加藤「いいに決まってるでしょ。感謝としてフルーツケーキをご馳走するわね」
「ありがとうございます・・・!私、フルーツケーキ大好きなんです」
加藤「ふふふ、そうなのね。っていうか、もう敬語やめない?なんか、こっちが恥ずかしくなってくる」
「え・・・あ、はい。いや、うん。わかった・・!」
その後私は、加藤さんの豪邸で勉強を教える事になったのだ・・・。
???『そんなあ!!!!!ぼく、ぼく・・・あいつの胸の内を暴いて、恥をかかせてやろうと思ったのに!!!!!くそっ、失敗だ。自分から晒すなんて、とんだ馬鹿者だよ!!!!
・・・でも、ぼくは諦めないよ。絶対に。
それに・・もうすぐ"完成"するしね・・・!』