『そ う だ よ。』
すけくんはにっこり笑って言った。
「・・・・何で、私達なの」
すけ「ぼくが自由になるために」
「何から、自由になるの?」
すけ「・・・・・おまえ等からだよ。」
すけくんは、私を睨んだ。
「おまえ等からって・・・私達が一体何をしたっていうの!?」
すけ「まあ、知らないのは当たり前か・・・。」
「?」
すけ「今から153年前。ぼく達は小さな集落に住んでいた。」
「ひゃ、153年前・・・!?」
おそらく明治時代だ。
すけ「うん。泉集落とよばれていたよ。今の泉神社があるところだ。ぼく達はそこで、平和に暮らしていた。・・・でもある日、集落に悲劇が起きたんだ」
すけくんは絵本を読み聞かせるように、ゆっくりと話していく。
すけ「夜遅くだった。泉集落に、隣の集落の人々が大勢で襲ってきたんだ。集落には放火されて、全部燃えてしまった。・・・・集落のみんなも、全員」
「・・・・・!」
すけ「その放火してきた集落はとても困窮していて、ぼくたちに助けを求めていたんだ。その時には集落に対して街が支援をしてくれる集落支援制度があったのに・・・わざわざぼくらの泉集落に。まあ、その集落は人殺しも頻繁にあったから、なくなった戸籍を確認されたくなかったんだろう。」
自分の集落の人間が殺された話だというのに、すけくんの笑顔は変わらない。きっとその中には家族もいるんだろう。
じゃあ・・・泉神社は、前悲劇がおきた場所だったのか・・・。
すけ「でも・・・おかしいよね。ぼくらが支援してくれないからって。集落同士は助け合うだろって。こっちもみんな切り詰めて一生懸命生活してたんだ!悪いのはあっちの村長なのに!」
どんどんすけくんの笑顔は狂気的になってゆく。
すけ「・・・だから、放火をした集落の奴らを殺したあと、ぼくも後を追って死んだよ。ぼくだけで、生きていける訳ないからね」
「・・・・・。」
無理もない話だ。
だからか。だからすけくんはあの時『悩みがあったら相談してね。ぼくも・・・』と言ったんだ。続きは、『ぼくも、つらいから』だ。そして、すけくんが夢で『あんなやつ・・・あんなやつ・・・』と言っていた相手は、私達だ・・・。
それに、白蛇の檻を壊したのは・・・白蛇は神聖なもので、すけくんは邪悪なものだから・・・
・・じゃあ、私の家の場所がわかったのは?
「じゃあ、どうして、私の家の場所がわかったの?加藤さんに教えたんでしょ?」
すけ「君をつけていったんだよ。」
「・・・・・。」
すけ「話の続きをするね。だから、ぼくは幽霊になっておまえ等の生まれ変わりまで永遠に呪ってやろうと思った。
人間は一つの魂につき100回、生まれ変わる。
でも君達は許されない大罪を犯した。だから永遠に輪廻転生はつづく。つづくといってもつらい人生ばかりだけどね。今回ぼくが見つけるのは比較的早かった方で、一番かかったのは50年だ。
ぼくらの集落には大切な人が何人もいた。それを奪ったんだから当然だよね?」
何も、言えなかった。
じゃあ、私が・・・・・?
「わたしが、やったの・・・?」
そう言うと、すけくんは突然声を上げて笑い出した。
すけ「あははははははははは!!!!!!うふっ、あはっ、はははは!」
一体何が面白いのだろうか。
すけ「やぁっと、この時がきたよ。君達が犯した重~い罪を知って、苦しむ時が!!!
・・・・永遠に、後悔しろ」
「・・・・・・・そんな。・・・・私は、誰だったの?」
すけ「うふふ、良かったね。・・・・計画をした主犯だ。」
「・・・・っ!でも、私は前のその人じゃない!」
すけ「違うよ。身体は使い物。魂は永遠。魂はそのままだ」
わたしが。 すけくんの家族を。仲間を。
「・・奪った。」
すけ「ああ、君はぼくから全てを奪った、立派な悪魔だ・・。」
「じゃあ、由香里ちゃんと加藤さん達は・・・」
すけ「君の共犯者だよ。由香里ちゃんもお先にいったよ。」
「いった・・・?」
すけ「しんじゃった。ぼくが真実を教えたからね。」
「あああ・・・そん、な・・・」
すけ「ううん、悲しまなくて大丈夫。きみもすぐいけるよ」
すけくんは笑う。笑う。
とても嬉しそうに笑った。
すけ「じゃあ、またね。」
そういってすけくんは拳銃を取り出した。
『次君たちが生まれ変わってまた会った時も、よろしくね。』
【バン。】
街の喧騒に、銃声が響いた。