ガシャン!!!
夕方頃の泉神社で、一人の少年が檻を蹴っている。
「ああもう!壊れない!」
檻の中には、白蛇が十匹。少年のことをとても怖がっているようだ。
その様子を、宮司は木の陰から見ていた。だが、少年を止めにいくことなど出来なかった。
なぜなら、恐怖を覚えるほどの笑顔で蹴っていたのだから。
宮司(あの少年・・・白蛇達に何をして・・・白蛇一匹高いのに・・・・・)
ガシャン!!!ガシャン!!!
・・・ガシャ
「あ・・開いた」
檻が少年によって破壊されると、中からニョロニョロと白蛇が出てきた。
その白蛇達を少年はわしづかみし、まるでジャッキー・チェンの鎖ように地面に叩きつける。
宮司(ひいいい!この子は、ジャッキー・チェンが好きなのか・・?白蛇を使ってやらなくても!!)
バン、バン、バン、バン、バン、バン、バン。
少年は変わらず笑顔のまま叩きつける。
白蛇は頭を地面に強打し脳しんとうを起こしていた。
体も傷ついている。
宮司(ど、ど、どうしよう・・・)
十分ほど白蛇を痛めつけると、少年はリュックを背負って笑顔で帰って行こうとした。
・・・だが、少年は宮司にぐりんと勢い良く振り返った。
宮司(・・・・ばれてしまった。私もここで少年に・・・・・)
宮司がそう思っていると少年は宮司に歩み寄ってきた。
少年「あの・・・これ」
と少年は宮司に何かを差し出した。
宮司「え?これは・・・」
少年「ジャッキー・チェンの、DVDです。お勧めなので見てみて下さい」
少年はそう言って顔を赤らめた。
宮司「・・・・・」
少年「では、また」
少年はそそくさと帰って行った。
宮司の手にはジャッキー・チェンのDVDが残っていた・・・。
-??年後-
「なにこれー?」
「ひいおじいちゃんが持ってたジャッキー・チェンのDVDよ」
「ジャッキー・チェン?誰それ」
「昔の中国の俳優よ。神社に来たある少年から貰ったみたい。せっかく取ってあったんだし見てみましょう」
女がDVDを入れテレビをつけると、映画のオープニングが流れたあとにどアップで、ある少年が異様なほどの笑顔で何かを言っている映像が残されていた。
『許さない・・・許さない・・・・・』
「キャアアアアアアアアアアアッッッッッ!!!」
泉神社は泉集落の死者達の怨念で呪われている・・・・・