コーヒーを飲んでうとうとしていると、カズが毛布をかけてくれた。
カズ「おやすみ。今晩はここで過ごしなよ。」
「はい・・・。」
すけ「アヤミちゃんおやすみ!」
すけくんもカズもそろそろ寝るみたいだ。
明日は・・・そうだ、会社は休みか。
安心しながら眠りについた。
-翌日-
カズ「すけ、落ち着いて!!」
すけ「うわあああああ!!!」
2人の大声で起きた私は、目の前の光景に目を見開いた。
すけくんが、酷い顔で泣き喚いて、割れた実験道具の破片をカズに刺そうとしていたのだ。
「どうしたの・・・?」
そう言うと、カズは焦った顔で
カズ「すけが情緒不安定になってる!!」
と言った。
すけくんは地団駄を踏んで暴れまわる。
すけ「あいつら・・・!夢でも出てくるなんて許せない!!!僕のことを馬鹿にしやがって!!!!」
カズ「大丈夫だよ!!!それ夢だから!!」
私がすけくんに近づくと、すけくんは私に泣きついてきた。
すけ「アヤミちゃぁぁあん!」
「わっ」
すけくんは鼻水を垂らしている。
「ちょっと、やめて」
冷静に言うと、すけくんは頭が冷えたらしく、落ち着いてきた。
すけ「あ・・・ごめん」
「なんで暴れてたの?」
すけ「僕ね・・・幽霊なんだ。それで、生きてるときに自分の集落の皆を殺されて・・集落の皆を殺したやつらの生まれ変わりをさがしてるんだ。
・・で今日、そいつらが夢に出てきてね、僕のことを笑ったんだ!!!だからむかついて、許せなくて・・・」
だから昨日、"そいつら"を殺す劇薬を。
「夢でしょ?」
すけ「・・・・・・うん」
「そんなの気にしない方がいいよ。気にしてたらおかしくなる」
すけ「わかった。・・僕もまだまだだね」
そう言ってすけくんはえへへと笑った。
カズ(一瞬ですけを大人しく・・・!)
カズ「ねえ、アヤミちゃん。君にはすけ係を頼みたい」
「えっ」
カズ「さっき一瞬ですけを大人しくしたでしょ。僕はすけをなだめるくらいしかできないから、お願いするよ」
「・・・・はい」
すけ「やったあ」
「・・・・・。」
その時、私のお腹がぐううと鳴った。
カズ「あ・・・お腹すいてるよね。パンくらいしかないけど、食べる?」
「はい・・・・。ありがとうございます」
カズは台所に行って、朝ご飯を作り始めた。
「すけくんは、ご飯食べないの?」
すけ「うん、僕幽霊だから・・。まあ、食べれるっちゃ食べれるけど、わざわざ食べる必要はないよ。」
「でも、液体に触ったとき火傷してたでしょ?」
すけ「まあね。僕はちょっと特殊なんだ。あいつらが生きる時間に行くために時空を移動できる。そして、人間界に溶け込むため体は生身なんだ。」
「幽霊だからって理由は・・?」
すけ「んー、特に意味ない」
「ふーん・・。」
じゃあ普通に手を突っ込むのと同じじゃないか・・。そう思っていると、カズが朝食を持ってきた。
カズ「はーい、できたよ!」
テーブルには目玉焼きとベーコンがのせられたトーストと、コーヒーが置かれた。 とても美味しそうだ。
「ありがとう・・・」
パンを噛むと、さく、と音がした。
卵がとろけて口の中に広がる。ベーコンもカリカリで美味しい。
「美味しい・・・」
カズ「ほんと?それなら良かった。嬉しいな」
パンを食べる私をすけくんがじっと見ている。
「・・・何?」
すけ「それ、食べたい」
「・・・食べるの?」
食べていた食パンをすけくんにあげると、すけくんは一口食べて、目を見開いて言った。
すけ「・・・うまい!!」
カズ「ふふ。」
すけ「カズの作る料理、正直美味しくないのかなと思ってたから・・・びっくりした」
カズ「なんだと。」
すけ「ごめんごめん。」
すけくんは少年らしい笑顔で言うと、私にパンを返した。
「・・もういいの?」
すけ「うん。本当は食べなくてもいい体だし・・・それに君のご飯がなくなるでしょ」
「・・うん」
再びパンを食べ始めると、カズが言った。
カズ「あ、伝えてなかったけど・・アヤミちゃん。君の死相が消えてる」
「へえ・・」
カズ「おそらく昨日、僕がアジトに呼んだからだと思う。そのままだったら、君は自殺をしていた」
すけ「・・・」
すけくんの表情が曇る。
カズ「あ・・すけくん。気にしなくて、いいよ」
すけ「いや、気にしてないよ。思い出してしまっただけだから」
カズ「そうか・・・」
カズはそう言ってすけくんの頭を撫でた。
どうしたのだろう?
カズは話を続けた。
カズ「それで、君がもしここを気に入ってくれたんだったら、ここで暮らさない?僕達が助けた人からお金は貰ってるんだ。そのお金で暮らせるよ。今も活動してるし」
私はここで大きな決断を迫られた。