カズ「このアジトで暮らさない?」
私は大きな決断を迫られた。
「ここで・・・?」
私は、会社も辞めて、ここで・・・。
生きていけるのだろうか?
カズ「嫌だったらいいんだ。無理には言わない。でも、君には人を助ける素質があると思うんだ。」
こんな私に。でも、こんなところで、立ち止まっていたくない!
「・・ここで、生活したいです!!!」
私は、2人に向かって頭を思いっきり下げた。
すると2人は、顔を見合わせた後
『やったあああああああ!!!』
と飛び跳ねて喜んだ。
2人の反応に、思わず私も笑みがこぼれる。
カズ「あ、初めて笑った!」
「えっ?」
すけ「うんうん、初めて見た。ずっと無表情だったしね。笑顔もかわいいね」
顔が赤くなるのを自覚した。
カズ「じゃあ、君には今からこのSalvation teamに所属してもらう。」
「救いの・・チーム?」
カズ「ああ。Salvation teamは日本語で救いのチームと言う。」
すけ「うふふ。頑張ろうねぇ」
「うん・・!」
カズ「じゃあ、説明をするね。このチームでは、君のように困っている人達を助けている。その対象者は僕が予知で見つける。そしてその対象者に君達が助言して欲しいんだ。最初は怪しまれるかも知れないけど、僕が心理学をまず1ヶ月みっちり教えるから大丈夫。その技術で聞いてもらえるようにするんだ。」
すけ「僕も教えてもらったよ。ここには心理学の本がたくさんあるんだよ!」
すけくんは心理学のボロボロになった、高く積まれた本を私に手渡す。
ぺらりとめくってみると、そこには目が回るような密度の字でいっぱいだった。
「うわ・・・。」
カズ「大丈夫、大丈夫。僕が見るところ君はすごく頭が良いみたいだから、すぐに習得できると思うよ」
すけ「うん。意外と楽しいよ!」
「頑張ります・・・」
やる気を感じていたとき、カズの様子がおかしいことに気づいた。
カズ「う、うーん・・・」
「大丈夫・・?」
カズは頭を抱えてうずくまっている。
カズ「なんか、物凄く重大なことが頭に浮かんだんだ・・・予知だと思う。ちょっと待って」
カズはうずくまったままうーん、うーんと唸っている。
カズ「あ・・・・・」
カズが顔をあげると、その顔はびっしょりと汗で濡れていた。
カズ「あっ、あ・・・。そんな・・・・えっ・・」
すけ「どうしたの、カズ。だいじょうぶ?」
すけくんがカズを心配そうに見ている。
カズ「・・・っ。ああ、大丈夫だ。すまない」
「どうしたの?何を見たのか、言って」
カズは絶望したような顔で言った。
カズ「この3日以内に・・・街で大量殺戮が起きる・・・」 と。
「え・・・?」
カズ「僕達が動かないと、大勢の人が犠牲になる、史上最悪の殺人事件になるだろう。・・・このままじゃ、まずい」
よっぽど動揺しているのか、カズはぜえぜえと息をしている。
すけ「そんなあ・・!あっ、そうだ、あいつらも巻き込まれるんだったら、その殺人鬼の矛先をあいつらだけに向けて・・・」
カズ「おいおい、すけ。1人で・・ハァ、突っ走るなよ・・ハァ」
すけ「ごめんっ。ことあるごとにあいつらを殺す方法を考えてるから・・・。あと、ほら、酸素発生させて集めたから、この瓶の中の空気を吸って」
すけくんは私達が話している間に酸素を発生させる実験をして、カズに吸わせるように瓶に集めていたようだ。
カズ「あ・・・ありがとう・・・。」
カズは酸素を吸うと、深呼吸をして呼吸を落ち着かせた。
カズ「ハァ・・・。仕切り直して、この3日以内に、街で大量殺戮が起きる。犯人像は見えた。そいつは病院に入院している患者。事件を起こす前に病院から逃げるだろうから、近くの病院を調べて、この3日間3人で全ての病院周辺を見張る。」
全て?そんなの絶対に無理だ。
「そんなの出来ないじゃない」
カズ「ああ。だからロボットでも見張る事にする」
すけ「カズはロボットが作れるんだよ!!」
「へえ・・」
凄いなぁと思っていると、カズはパソコンを使って近くの病院を調べ始めた。
カズ「結構あるな・・・全部でー・・10」
「10!?そんなの、ロボットを使っても無理だよ。可能性が高い病院だけに絞って、見張るべきだよ」
私がそう言うと、カズは私をぎろりと睨んだ。
カズ「駄目だ。ターゲットは市内の病院全体。僕はそれだけしか予知出来なかったから、全体を見張る必要がある」
「・・・・」
呆然としていると、すけくんが私の肩に手を置いた。すけ「アヤミちゃん、仕方ないよ。街の皆を僕達で守ろう」
すけくんは私を励まそうとしているみたいだ。
カズ「このチームに入ったからには、人の命を救う義務がある。命懸けで助けよう」
彼の目は強かった。本当に強かった。