3台の救急車のサイレンの音が街に響く。
「すけく・・・・かず・・・うう」
アヤミの傷からは血が止まらず、ひどい貧血状態になっていた。
隊員「無理しないで下さいね!いま手当てをしていますから・・・」
私は静かに目を閉じる。
なぜこんな事になったのだろう。
これじゃあ、殺戮する可能性のある人物を捕まえられない!!!
爆破した犯人はきっと、その人物だ。
私達の動きを知っていたのか・・?
_____そうだ。あの時。
私がロボットを病院に置きに行った時。
精神病棟から誰かがこちらを見ていた・・・
たしか髪の長い女性で、睨みつけるように。
もしかして、その女性が?
《殺戮は、病院の患者が起こす。》
ああ、カズも言っていた。
・・じゃあ、わたしのせい?
私は、また・・
《上手く行かないのか。》
またか。またなんだな、きっと。
私はいつも上手く行かない。
いつもいつも。
また、失敗してしまったんだ。
-2台目の救急車-
カズ「お願いだから離してくれ!!!!」
カズが救急車内で暴れて、救急隊員に必死に抵抗している。
隊員「あなたは重傷を負っています!!今治療しないと命の危険があるんです!」
「それでもいいから!!このままじゃ街の皆が死ぬんだああああああぁぁぁぁぁ!!!!!」
カズは必死に救急隊員に訴えながら泣き叫ぶ。が、救急隊員は聞き耳を持たない。
隊員「ああっ!傷が開きますよ!!落ち着いて下さい!」
カズ「・・・・わかった」
カズは静かに言うと、窓のカーテンを開け、拳で思いっきり殴った。
【ガッシャアアアアアァァァン!!!】
大きな音がすると同時に、窓ガラスの破片が飛び散る。
隊員「うわああああああっ!!」
カズ「ごめんね。僕は街の人を守らなければならないから。」
そう言ってカズは窓から飛び降りた。
それを見た救急隊員は、呆然と立ち尽くしていた。
カズ「はぁ、はぁ・・・っ、ううっ!」
カズは街までひとしきり走ると、傷に激痛を感じて座り込んだ。
傷が開いたのだ。
地面にはぽたぽたと血がおちる。
カズ「ぐぅぅ・・・くそっ!」
それでもカズは立ち上がって走りつづける。
道に血の跡を残しながら。
・・・絶対に捕まえる。
「絶対に許さない。」
-街-
「着いた・・・・・・・ああ。」
街では ____被害者が出ていた。
うずくまる髪の長い女性の辺りには、全く人がいない。
むしろ女性を避けている。
カズ「・・・人が刺されてるのに何ぼーっとしてんだよっ!?!!ふざけんな!!!!」
驚く人々を睨みつけ、カズは急いで被害者のもとへ行った。
カズ「大丈夫ですか?」
被害者と見られる女性は動かない。
すると突然、女性は腕を振り上げた。
そこには包丁が。
カズ「えっ・・・」
避けようとした時には遅く、包丁はカズの胸の古傷あたりに深く刺さった。
カズ「ぐぅっ!!」
カズは地面に倒れた。
回りに血が飛び散る。周囲の人々のざわめきが聞こえた。
カズ「・・・・・っ」
あまりの痛みに声を出せずにいると、女性の服に違和感を感じた。
これは病院に入院する患者が着る服だ。
ああ。
これが、犯人か。
でも、もう僕は目の前にいる女性を捕まえられない。
だって、僕はもうすぐ死ぬから。
今度こそ死ぬ。
犯人は目の前にいるのに。
刃はおそらく心臓に貫通している。
そろそろ心臓は止まる。
カズは自分の流れていく血を見ながら
「アヤミ、すけ、頼むよ」
と言って目を閉じた。