アヤミはカズを強く睨みつけた。
カズ「・・・なんだよ」
カズはハア、と溜め息をつく。
カズ「こっちの気持ちもわかってないくせに」
すけ「カズ・・」
「そっちこそ!」
カズ「アヤミが死んだらどれだけの影響が及ぶと思う!?僕は気が狂いそうだったんだぞ」
「それは私に関係ないじゃない」
カズ「周りに迷惑をかけたくないから死にたいんだろ?僕はアヤミが死んだらまともに生活できなくなる。このほうが迷惑かけてるじゃないか!本末転倒だよ」
「・・うう」
アヤミは唸った。胸を押さえて、とても苦しそうに。
「そんなこといわないで・・・」
カズ「・・・・」
カズは何も言えなかった。
「・・昔から私は」
アヤミはゆっくりと話し始める。
「自分が嫌いだった。だから勉強で価値を証明しようとした。そうしてないと頭がおかしくなりそうだった。いつもいつも劣等感に苛まれて・・・。宇宙を考えて嫌なことから・・人を傷つけてしまう自分から逃げてた・・・。私が死ぬことで逆に迷惑がかかるのならそれは申し訳なかったけど、【アヤミ】として生きるのがどうしても辛かった。学生の頃、自殺未遂もしたっけ・・・あはは」
すけ「アヤミちゃん・・。」
すけは悲しそうにアヤミを見つめる。
なんて可哀想な子だろう。
まだ、本質を〝わかっていない〟のだ。
すけ「自殺未遂って・・止められたの?」
「人の気持ちも知らない大人にね。私が学校の屋上から飛び降りたら・・・なぜかふかふかのマットに落ちててさ。用意されてたんだろうね。だからその時すごく泣いた。大人達は私が泣いてるのを『死ななくて良かった』という意味に勝手に捉えて。私は死ねなくて悲しいから泣いてたのにね・・馬鹿みたい」
すけ「酷いことをする人達だね」
「ねえ、なんで生きなきゃいけないの?苦しくて苦しくて、どうしようもないんだよ。誰かに相談しようとしても、誰も信頼できないのに」
すけ「アヤミちゃん。僕はね」
すけはへたれこんでいるアヤミの目線に合わせてしゃがんだ。
すけ「死んでよかったと思ったことはないよ」
「え・・?」
すけ「アヤミちゃんや僕のような哀れな人間はね、成功者や何でもできる天才にはないものをもっているんだ」
「・・・地位の低さ?」
そう言うとすけくんはううん、と首を振った。
すけ「違うよ。地位の低い、弱い立場に置かれた人達の気持ちがわかることだよ。だから僕はもう少し生きていたら、そんな人達を少しは救えたかもしれない」
「気持ち・・・」
すけ「何でもできる人は何でも出来ない人の気持ちは分からない。健康な人は不健康な人の気持ちや苦しみはわからない。地位が高い人は地位が低い人の暮らしはわからない。つまり僕達は色んな視点を持つことができるんだよ」
すけくんはにっこり笑う。
すけ「だから、アヤミちゃん。そんな人を、僕達の手で救っていこう」
手をアヤミに伸ばしたすけくんの目は、きらきら輝いている。
すけ「価値がなくてもいい。まず【価値】を人につける時点でおかしいんだ。人は支え合って生きていくべきだよ。だから・・・また3人でSalvation teamを続けていこうよ」
涙が溢れる。すけくんはまるで、救世主のようだ。
包み込まれるような温かみを持っている。
私はゆっくりと頷いた。
「うんっ・・・!」
苦しくても、私には色んな人達の苦しみを解ることが出来る。
だからまた、【Salvation team__救いのチーム】で沢山の苦しむ人々を救い続けよう。
カズ「アヤミ・・・?」
「ごめん・・カズ、すけくん。いっぱい心配かけたね」
すけ「うふふ。良かった良かった」
カズ「よかった・・・・・。」
一件落着、3人は笑いあった。
『Salvation team』。
この救いのチームで、人生を再出発しよう。
まだ、物語は始まったばかりなのだから・・・。