午の刻―。
グレン城下町の宿屋広場にて、群衆が集っていた。
冒険者や住民が集い、一斉に一つの方面に耳を傾けている。
その先にいるのは、怪しげな黒いフードを被った人の様なものが二つ。
その一つは口を開き、こういった。
「我が神に捧げんとすれば、平等な新世界が訪れよう」
と―。
続けるように声を大にして演説し始めた。
「この世界は不平等で成り立っている。力ある者が生き無き者は地を這うのみ。我が神は、その不平等に怒りを抱きこう告げたのだ。あらゆる生命が平等な世界を創成させんと」
「世界の崩壊と創成には大いなる力が必要とする。故に!この不平なる民の力も地位も、魔力も異能も―あらゆる全ての民の生命を我が神に捧げるのです!」
荒れ狂う演説する者は、おもむろに手を天へ翳す。さすれば、演説に群がる群衆から魔力の脈流なるものが、その者の掌へと吸い込まれる様に集うのだった。
次から次へと倒れていく人々の姿。
「な、なんだこれ!」「ま、魔力が…」「力が…」
波をうつ様に倒れるその光景に、恐怖を抱き逃げる者も漏れなく力を剥奪されんとした。
その異様な状況の最中、軍は黙って見過ごす訳にもいかず、グレンの騎士団を筆頭に各五大陸の国も始動する。
そして、彼女も必然的に動きを見せる。
その彼女の名は―シルティア・メルキュール