――晩冬。
各街には一変して聖夜のお祭りで盛り上がりを見せる。
広場には巨大なツリーなどで飾り付けが施されている。
そんな最中、俺はメギストリスの駅前で待ち合わせをしていた。
メギストリスはカップルの定番の街なのか、男女中で一緒に聖夜を過ごす姿が見受けられる。
気が抜けたかのように傍観していると、俺の耳元で甘く柔らかな声が聞こえるのだった。
「竜牙お待たせっ!待った?」
「ん?あぁ、ついさっき来たばっかだ」
声の方へ視線を向ければ、頬を赤く染め口元をマフラーで包み隠すシアムの姿が。
雪景色にその身を浸かる彼女の姿は、人際輝かしく目立たせていた。
街頭に照らされた金色の髪が淡く輝かせながら、シアムはつい見惚れていた俺に照れていながらも、照れ隠しの様に俺のマフラーに手をかけた。
「もうっ…、巻き方変だよ?直してあげるね?」
「すまん、どうにも自分でやるとこうなっちまって…」
互いに微笑みながら、そのやり取りを楽しむ。
マフラーを巻き終えた頃、俺はこっそりと事前に買っていた紙袋をシアムに渡そうと話を切り出した。
「なぁ、シアム。渡したいものがあって受け取ってくれるか?」
「え…!?う、うん。ありがとう竜牙…。中見てもいい?」
「あぁ、勿論」
シアムは嬉しそうな表情をしながら、紙袋からラッピングされた箱を取り出した。
中を開けてみると、群青に染まる煌びやかなピアスが入っていた。
シアムは頬を赤らめ、静かに「つけてみてもいい?」と尋ねつつ、了承を受けると早速両耳に付ける。
自分がプレゼントしたピアスをつけた彼女の姿があまりにも綺麗過ぎて、思わず言葉を零れる。
「――とっても似合ってる」
「大切にするね?竜牙…!」
互いに赤面しながら、嬉しそうに抱き着くシアムを優しく包み込む。
その日だけは、いつもより冬風が涼しく感じた。