アストルティア全体を恐怖のどん底に陥れた最恐の破壊神ジャナデスが世に解き放たれたあの日から数日前のこと――。
世界には、"幻影教団"の謎組織によって世界が忽ち恐怖に陥った。
アストル新聞に大きく記事にされている、"力剥奪"。
冒険者や騎士団など多くの力を持つ者が、力を剥奪され無力化されている事件。
その事件一方に、シルティア姫騎士が一任されてから数刻。
巻き込まれる被害者になることを露知らず、自身より幻影教団に記事の一面を奪われて気難しい表情をしているこの少年。ブリガンド・ラドロ・バンディート。
「ちょ~っと!ラドロ!なに気難しい顔してんのよ!新聞を長々と眺めてるなんておじさんみたい」
頬袋を膨らましてムスッとした様に新聞を取り上げた少女。ウォーリア・ゾルダート。
ラドロの幼馴染であり、アスフェルド学園の同級生。
「…って、あ!おい!勝手にとるんじゃねーよ!」
「私達の話に呆れて、挙句の果て無視を決めて新聞読むアンタに言われたくないっ!!」
ラドロの頭を一叩き。
痛がる様子に微笑む清らかな少女がまた一人。ラドロらの間で椅子にちょこんと座る彼女の名は、フォリア・レビュル。レビュル財閥の娘で、ここ最近転校してきた。
そんな三人の仲睦まじい学園生活を過ごしていた。
◇◇◇◇◇◇
夕刻。
下校をする三人。一歩下がって歩むラドロに死角から一枚のカードならぬ物が投擲。
気配を感じたラドロは、身体を仰け反り頬を掠めた。
投擲方面を一瞥した後、地に突き刺さったそれは奇しくも怪盗シーフが放つトランプだった。
トランプを地から抜き取れば、カードには字面が刻み込まれていた。
字面にはこう書かれていた。
「怪盗シーフ。貴様との決闘を申し込む。断れば、命はないと思え。幻影奇術師(シャドウ・マジシャン)」
と。
怪盗シーフ並びにラドロ直接に挑戦状を挑まれ、ラドロの肌身には鳥肌が立つ。
今まで正体を誰かに知られずに行動していた彼が、初めて誰かに正体がバレたからだ。
ラドロはその物怖じに屈せず、ただひたすらに売られた喧嘩には買う。
ただそれだけだった。
余裕綽々に不敵に微笑んだ後、今宵もまた夜空を駆ける。
◇◇◇◇◇◇
幻影奇術師(シャドウ・マジシャン)。
例の事件における謎組織"幻影教団"の一員の可能性が大。
見た目は恐らく、怪盗シーフを模した姿。
「じいちゃん、そんなのまるで俺の偽物みたいじゃんか~」
「そんなもの言われてもなぁ。ワシどうこうという話ではないのじゃ。あれから各地で噂、目撃情報が多数報告されておる。ここ数日は、あまり目立った行動をしないことじゃな」
「でもよぉ~」
「これはお前を守る為なのじゃ。お前は返って目立つ行為をしてみろ。忽ち濡れ衣を被るだけのことじゃ!消失事件の後追いをこれからも続けるというのであれば、ここは国家騎士様に頼るしかなかろう」
不満げに、祖父から入手した情報が記された紙を眺めながらボヤく。
勝手に俺の姿を形どって、暗躍する幻影奇術師。
――許せるはずもない。
仮に奴との対峙が起きえた際には、ただの学園生である俺など勝てる見込みがないだろう。
だが、誰かに頼るといえど誰かに怪盗シーフと俺が同一人物だと言う事をバレたらそれこそ問題になる。
かといって、予告状なるもので戦力を加えようとしても濡れ衣を被るだけだ…。
一体どうしたら…!!
思考を巡らせ、自問自答を繰り替えしている俺の元に、一つの人影が現れる。