その者は、ラドロ達の居るマジック部の部室へと入室する。
開口一番に放つは嫌味ったらしい声。
刀を抱えながら入室するは、見覚えのある人物であった。
その人物は、ラドロを一瞥したかと思えば、ラドロの横を素通りし、祖父の元へ。
「ブリガンドさん、例の盗品を返却に参りました。…っと、おや。ラドロ君も同席していたとはね?気付かなかったよ」
「――て、てめぇは…!?アンス!?」
「転入早々呼び捨てとは…。まぁいいさ、僕は寛大なのでね」
「なんでお前が…!――ってそれは!翡翠の宝刀!?」
「おや?まさかご存じだとは意外でした。――いや、それ目的で盗んだ故でしょうか?」
「な、なんのことだよ!」
「ははっ!騙しとおせるのはいつまで持つかな?」
二人仲良く言い合い喧嘩している中、合間を割って入る様に祖父がアンスの元へ。
「おぉ、これはこれはアンス君。ありがとう。これは報酬金だよ」
「えぇ、此方こそ。良き友を作れて光栄です」
「ほっほ!まぁその当人はそうだとは認めておらんけどな」
「はぁ?どういうことだよ!じいちゃん!」
事情を説明した後、目を大きく見開き驚きを見せる。
「アンスに依頼を頼んだの、じいちゃんだったの!?」
「そうじゃ、元々刀剣展覧祭の主催人の行動が怪しくてな。もしかしたらと思って事前にアンスの方に依頼を頼んでおったのじゃ」
「だからあそこに…!」
「えぇ、まぁ何処かの?誰かさんに?先を越されたのは苦肉も許すまじでしたがね?」
まるで怪盗シーフの素性を知っているかの様な言い様で此方に睨みつけてくる。
対抗せんと睨み返す俺の反抗を、一咳で済ませ会話を切りこむ。
「して、本題に移りましょうか」
「本題…?」
「えぇ、偽りの怪盗シーフならざる者が、忽ちグランゼドーラ付近を飛び回っているとの噂が、僕の方にも煩い程来ていてね。
とはいえ、本物の怪盗シーフがここ最近活動を見せていないという時点、そしてここで胡坐をかいて座っている時点で、例の幻影教団の一人だということがわかったんですが…」
即座に胡坐を解くラドロに一瞥した後、祖父の方へと視線を戻す。
「然し、何故彼怪盗シーフに固執しているのか。何故彼の姿をして暗躍しているのか。行動の意図が全く読み取れません」
「…多分。一騎打ちだろうよ。怪盗シーフと単純に力をぶつけ合い…」
「…"剥奪"ですか。何故一騎打ちということが分かるのかそこは一旦置いといて…。仮に襲い掛かるとしたら周囲に危険が及びますね」
「じゃあ…どうすんだよ」
「単純な思考なら、怪盗シーフを囮に騎士団の方で討伐を依頼する。…それぐらいでしょうか?」
「…囮って。まぁとにもかくにもそれが一番手っ取り早いんだろうな」
それ以降、ラドロとアンス、祖父は怪盗シーフを囮にその幻影教団の一員を倒す作戦に移行させた。
ウォーリアの親父さんにも協力を促しながら、着々と作成準備を取り行ったのだった。