▼ 恒等式について ▼
恒等式とは,あらゆる変数にどのような値を
代入しても成り立つ等式のことである。
展開・因数分解の公式などといった
式は全て恒等式である。
恒等式には次のような性質がある。
【 A=Bが恒等式 ⇔ 両辺の同じ次数の項の係数が等しい。 】
恒等式を成立させる方法は主に2つある。
【 係数比較法・・・両辺の同じ次数の項の係数を等しくさせる。
数値代入法・・・変数に数値を代入する。 】
▼ 等式・不等式の証明 ▼
A=Bを証明するには,次の方法を利用する。
【 ① A-B=0を導く。
② Aを変形させてBを導く。
③ Bを変形させてAを導く。
④ AとBを変形させて同じ式を導く。 】
※ ただ単に,A-B=0と書いて証明終了としてはいけない。
等式を証明する上で,途中式は必要不可欠である。
虚数は次回で扱うが,虚数についての知識がある方は
カッコ内の文章を読んでもらいたい。
(虚数の奇数乗は虚数となる。
つまり,虚数の奇数乗には
大小関係がないので,不等式は
一般に実数の範囲で扱う。
したがって,「xは実数である」といった
注釈をする必要はない。)
不等式の証明は①と同様にして証明できる。
また,実数を2乗すれば必ず0以上になるから,
A≧0を証明するには,A=X^2+Y^2+・・・を導けば良い。
▼ 相加平均と相乗平均の大小関係について ▼
a≧0 , b≧0のとき,次のことが成り立つ。
【 ① a^2>b^2⇔a>b
② a^2≧b^2⇔a≧b
③ a+b≧2√(ab) (等号はa=bのときに成り立つ。) 】
③の証明:②より,a+b≧2√(ab)を示すには
(a+b)^2≧{2√(ab)}^2を示せば良い。
(a+b)^2-{2√(ab)}^2=a^2+2ab+b^2-4ab=a^2-2ab+b^2=(a-b)^2≧0
よって,a+b≧2√(ab)が成り立つ。a+b=2√(ab)となるとき,
a+b-2√ab=(√a-√b)^2=0 すなわち,a=b //
(a+b)/2をaとbの相加平均,√(ab)をaとbの相乗平均という。
③の両辺を2で割ると,(a+b)/2≧√(ab)が導ける。
これは,相加平均と相乗平均の大小関係を表している。
③は,(a+b)/2≧√(ab)の両辺を2倍した式であるから,
相加平均と相乗平均の大小関係を利用した式であるといえる。
したがって,(a+b)/2≧√(ab)や③を利用して不等式を証明する際は
「相加平均と相乗平均の(大小)関係より」と添えれば良い。
▼ 絶対値の応用 ▼
a , bを実数としたとき,次のことが成り立つ。
【 ④ |a|≧a
⑤ |a|≧ -a
⑥ |a|=aまたは-aであるから,|a|^2=a^2
⑦ ⑥より,|ab|=|a| |b|
⑧ ⑥より,|a/b|=|a|/ |b| 】
例題4: a^3-b^3=(a-b)^3+3ab(a-b)を証明せよ。
右辺=a^3-3(a^2)b+3ab^2-b^3+3(a^2)b-3ab^2=a^3-b^3=左辺 //
例題5: x+(1/x)≧2を証明せよ。
相加平均と相乗平均の大小関係より,
x+(1/x)≧2√{x(1/x)}=2 //
※ 「数学Ⅱ パート3」でも述べたが,
「分母≠0」は既知としていいので,
「x≠0」という注釈をする必要はない。
練習問題4: 次の等式や不等式を証明せよ。
(1) a+b+c=0のとき,a^2-bc=b^2-ac
(2) a/b=c/dのとき,(a^2-b^2)/(a^2+b^2)=(c^2-d^2)/(c^2+d^2)
(3) a^2+b^2≧2(a+b-1)
(4) a>0 , b>0のとき,√a+√b>√(a+b)
(5) |a-b|≦|a|+ |b|
練習問題5: a>0のとき,6a+{(3-2a)/(2a)}の最小値を求めよ。
練習問題4および練習問題5の解答はパート6に載せます。