ザラターンの冒険日誌

かつて、己の本職を
パラディンに定めた日、
日誌にこう綴った記憶がある。


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本職とは、本気で取り組める職業！

本職を決めるとは、
その職を自らの代名詞とし、例え
不遇な扱いを受ける時代があったとしても
メインとして扱い続け、配られた手札の中で
最善を尽くすと誓うこと。

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あれから随分と時は過ぎた。

結局おれには、
あの日掲げた【　真の騎士道　】を
貫き通す事など、出来なかった。


淡い夢は、まるで
指の間からこぼれる砂のように
我が掌をすり抜け、儚く消えた。


だが…
それをもう、残念だとは、思うまい。


☆　　　☆　　　☆ ☆　　　☆　　　☆


おれは、今の『おれのカラー』に、

胸を張って生きてゆく。


☆　　　☆　　　☆ ☆　　　☆　　　☆



「　【それ】が　オ前の答かよ。　」


『　答だけなら、な…
　　もう随分と前に決まってたんだ。　

　　だから…

　　真の騎士に成れなかった自分に、
　　何かケジメをつける為の場所を…
　　ずっと探してた。　』


「　それが此処だったってか　」


『　まあ、そういう事だな。　』　


「　ふン…　」





『　と…ココまでが、
　　この挑戦をすると決めた時に、
　　あらかじめ用意した結末だった
　　訳なんだが。　』


「　…ン？　」


『　実際に再びレグと　まみえて、
　　戦い続けているうちに…
　　『ケジメ』という言葉も、
　　なんか野暮に思えてきてね。　』

　
「　あァ？　」




……そう、数ヶ月に及んだ
この挑戦中、過去の自分を
振り返る機会は、何度もあった。


そして　その中で…
１つの『自問』が生まれた。




『　もし騎士の誓いを綴ったあの日に
　　遡れたなら、おれは…
　　今度こそ、真の騎士を目指して
　　邁進するだろうか？　』




答えは…ＮＯだ。

即答だった。



もし過ぎ去った時を戻しても、
きっとおれは似たような選択をして…
再び此処に立っているだろう。


なぜなら…しんどいから…←
ってだけでは、勿論無く。


あの日から…いや、あの日以前から。
今日に至るまでずっと…


おれには　己の矜持　以外に、
『守りたいもの』が、
他に幾つも　あったから。


そして　それは。

騎士として、冒険者として…
きっと、とても幸せな事だったのだ。


ならば　それらを、自分なりに
守り行く事が出来るなら。

自分が本物だとか、ニセモノだとか。
案外、些細な事だったのかもな、と…
そう感じてきたから。



誇りに殉ずる孤高の聖騎士よりも。


…守りたいものを守り続け、
自らも格好悪く　あがいて
しぶとく生き残る！

…そんな三流騎士であれ。


…改めて、そう思えてきたからだ。




『　騎士くずれのザラターン、か…　』




…皮肉でも、自虐でもない。



きっと【　この名　】こそ…

愛すべき　おれの【　カラー　】で。



在りし日からずっと…
そして　これからも。


我が誇りと共に　足跡を残すべき…

おれだけの騎士の道、だったんだ。


と…今ならば。

胸を張って、
そう言えそうな気がするのだ。




『　…結局は、
　　収まるべくして収まった
　　鞘だったってことだなあ。　』



「　何を言ってるのか
　　さっぱり解ンねェ。　」



『　あっはっは！　そうね！　』




また来るよ、と言い残し、
巫女の守人テゼに背を向ける。

竜闘士なら足りてるから
お前はもう要らねェ、と
悪態をつく竜人に、
振り返らずに笑い声で応え、
おれは巫女の元を後にした。


☆　　　☆　　　☆ ☆　　　☆　　　☆


炎の領界は、
今日も灼けるように暑い。


おれは　ふと、
レグナードとの最後の戦いで
常闇の砂を得た事を思い出した。

この間、戦槌を交換したばかりで、
砂のストックは０。


…よし。



紅天に向かい、力一杯に
手にした砂を撒く。


一握の砂はナドラガンドの風に乗り…
降り注ぐマティルの灰に紛れて、
すぐに見えなくなった。


何故か、清々しい気分になった。


それを見届けて、
おれは　ゆっくりと、帰路に立つ。



…かくして、一つの挑戦は、幕をとじた。



一人では成し得なかった挑戦に、
数ヶ月間、根気よく付き合ってくれた
仲間達に、感謝を。


いつだって、黙って胸を貸してくれた
我が友、我が宿敵…
いにしえの竜レグナードに、感謝を。


ついでに、我が手記を読んでくれた
あなたにも、感謝を！←


(゜ロ)＜　皆様、ありがとう
　　　　　　ございましたッ！！




～～騎士の挑戦、了～～