ザラターンの冒険日誌

乾いた空に、流れる雲。
荒野に逞しく咲く
名も知らぬ草花が、風に揺れる。
少し寒いが、旅には丁度良い日和。
そんな朝。

☆　　　☆　　　☆ ☆　　　☆　　　☆


あれから、しばらく経って。


激闘の傷を癒した　おれは、
オーグリード大陸は、ザマ峠の
空の下を歩いていた。


歩行のリズムに合わせて腰元で
ちゃっ、ちゃっ、と音を立てるのは、
件の報酬代わりに、と…

デッドリー男爵に、
ネクロデアの技術と魔界の素材で
打ち直して貰い、業物として
生まれ変わった愛用の剣。

やはり、コイツがないと
腰周りが落ち着かない、というものだ。

鞘を　ぽん、と叩き、
異郷の空を想う。



☆　　　☆　　　☆ ☆　　　☆　　　☆



【　果て無き鉄壁の進軍　】。


彼の遺した…
そして君が得た、力の名だよ。


…『　鎧　』とはすなわち、
生きるという意志。


鎧を纏うとは、生への意志を
その身に纏うと言うこと。


鉄壁とは、己の肉体と
『鎧』とを一体化させる技術である。
そう。あくまでも、しなやかに、ね。


なれば【　鉄壁の進軍　】とは、すなわち！


…己の生きる意志。それこそを、
『つるぎ』へと変える奥義なのだよ。


おめでとう。
君は見事に、試練を果たしたのだ。



剣とは、力。


その　新たな剣持て、
進軍の意志を示した時。
きっと君は実感することだろう。

…己の成長という奴をね。





改めて、恩に着る、ザラターン君。


彼…あいつを弔ってくれて、有り難う。




…あ、そうそう。
生まれ変わった　その剣だが…
親しみを込めて、
こう呼んでくれても構わんのだよ？

『デッドリーソーｄ…
☆　　　☆　　　☆ ☆　　　☆　　　☆



『　　友を弔う、か…　　』



…ここに来るのは、何年ぶりだろう。


歩きながら、荷物袋から
小振りのボトルを取り出す。

銘は特にない。安物の、
甘めの葡萄酒だ。


おれもあいつも、酒にはとんと弱くて…
これ一本でフラフラになって、
小隊の皆に笑いものにされたっけ…


空を仰ぎ、
在りし日に、思いを馳せる。


…おれが騎士団を抜けた後、
色々あって隊は解体されて
メンバーは散り散りになり、今は
それぞれの道を歩んでいるはずだが…

皆、元気でいるだろうか。


まァ、曲者揃いの集団だった。
皆、簡単にくたばるようなタマじゃ
ないだろ。
…と、今は、思考を打ち切る。


つい最近、自分が　くたばりかけた、
という事実なら、ほら、そこ。
その棚の上。


…おっと、そろそろ博愛の碑のある
広場が見えてくる頃だ。

このボトルを片手に、
せいぜい格好良く
挨拶でもしてやるか。


…などと、軽い足取りで進む
おれだったが…

のちに　この広場で、
驚愕の事実を知ることになろうとは、
この時には、
夢にも思っていなかったのであった。



～～つづく～～