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元騎士

ザラターン

[ザラターン]

キャラID
: ER367-139
種 族
: オーガ
性 別
: 男
職 業
: バトルマスター
レベル
: 130

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ザラターンの冒険日誌

2023-11-11 22:01:51.0 2023-11-12 10:47:19.0テーマ:その他

折れた魔剣(15)(※ver6.4までのネタバレ注意)

軽快な靴音が小気味良い。
整然と敷き詰められた、石畳の上を行く。

周りを見渡せば、歴史を感じられる
荘厳な建造物が立ち並んでいる。

…ベルヴァインの森を抜け、
無事ゼクレス魔導国、王都までたどり着いた我々。


しかし王都は今、何やら…
ちょっとした混乱のさなかにあるようだった。
件の行商人の行方を探るついでに
その原因を調べてみれば、

どうやら魔王アスバルが、王国内に蔓延っている、
汚職や収賄等と言った『不正行為』の取り締まりを
一斉に行い始めたため、らしい。


『 良い事じゃん?

『 まあ素直に受け止めりゃ、そうなんだが…
  アスバル王が少し心配だな。


屈託のないエスタータの意見に、
おれは腕を組んで答える。
首を傾げる吟遊詩人を一瞥して、
ツキモリも頷き、呟いた。


『 この国の二つ名、知ってるか?

『 へっ?


☆   ☆   ☆ ☆   ☆   ☆


『 【 悪意の都 】だ。
   闇の『根』が深ぇんだよ、
   色々とな…


7500年もの歴史を誇るゼクレス魔導国。
この国を今日まで、強国として成り立たせ、
守り続けて来たその根幹には、
『血統主義』の貴族社会による、徹底した
『保守的思想』があると言われる。

汚職や収賄も『腐っている』とバッサリ切り捨てればそれまでではあるが、でも、それらがもし…

必要悪…良くも悪くも、国の根幹を支える
いわゆる『潤滑油』として機能していたのなら。

新王アスバルの改革…前政権からの
『急激な変化』を望まない者達も、
決して少なくはないだろう。


『 下層民は大歓迎だろうが、
  上流階級の多くを敵に回すだろうぜ。

『 アスバル王がやろうとしてる事は、
  『革命』と言ってもいいかもしれんな。
  例えるなら、暗黒大樹を浄化して、
  世界樹に戻そうとするような…

『 えっ!?
  そんなヤバいんだ!


しかし、考えてみれば…
本気で『革命』を起こす気なら、
今が絶好の機会でもある。

大魔王の名の下に
魔界が一つになりつつある今ならば、
他国に攻め入られる心配も無いし…
それどころか大魔王や、魔界各国の協力を仰ぐ事も
不可能ではあるまい。

それに魔王アスバルは滅神を斃し、
大魔瘴期に終止符を打ったと言う、
奇跡的な功績を持つ英雄の一人でもある。

保守派の貴族達の中にも、各々の思惑はどうあれ、
アスバル王を『勝ち馬』と定めて
手の平を返す者が現れたとして、
なんら不思議は無いだろう。

それらを考慮しても、
国の舵取りは至難を極めそうではあるが…


『 でもあの魔王達とエックスさんなら案外、
  暗黒大樹をぶっこぬいて
  世界樹を植樹するくらいの事は
  やってのける気もしてきたなあ…


楽観視で笑うおれを見上げ、
ツキモリは呆れ顔で肩をすくめた。


『 ふん、とりあえずは
  魔王アスバルのお手並拝見、だな。

  ま…この国がどうなろうが、
  僕にはもう、関係の無い事だけどな。


『 …それでも!


エスタータが急に大きな声を上げる。
何事か、と視線を向けるおれ達。
彼女は真面目な顔をしていた。


『 それでも…
  もう出てこないような国になるといいね。
  ……ツキモリみたいな、かわいそうな子。


…しばしの沈黙のあと、
ツキモリはそっぽを向いて
鼻を鳴らすのだった。


『 ……ふん…
  まあ…そうだな…。


☆   ☆  ☆   ☆   ☆


その後も『冥曜石』の足取りを追って
王都を歩き回り…
おれ達は運良く、件の行商人と出会う事ができた。

のだが…
行商人は、良い商売ができたのか、
ニコニコ笑顔で語る。


『 ああ、あの冥曜石なら、ついさっき
  競売に掛けられて…落札したのは確か
  ベラストル家の方でしたかねぇ!

『 べ…ベラストル家だァ!?

『 ええ、ええ。
  いやはや、この国での商いも、随分と
  やり易くなりましたよ。
  魔王アスバル様々ですなあ!


驚くツキモリを気にも掛けず、行商人は
笑顔のまま答え、上機嫌で去って行った。

はてベラストル…聞いた事がある気もするが…
思い出そうとしていると、
ツキモリがゲンナリした顔をする。


『 おい、鬼…最悪だぞ。
  悪い事は言わねぇ。石は諦めろ。

『 えっ!?

『 ベラストル家は…ゼクレス貴族の中でも
  名門中の名門で…
  ついでに現当主のリンベリィって奴は、
  相当なワガママ娘で有名だ。

  僕らが会いに行ったとしても、門番に
  ゴミを見るような目で門前払いされて、
  胸糞悪くなるのがオチだぜ。

『 リンベリィ…ああ、思い出したぞ。
  あ…あのお嬢様かあ…


先行きに、暗雲が立ち込めてきた。


~つづく~
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