明鏡止水。
目を閉じて深く呼吸する。
空気から取り込んだ気…『創生のチカラ』を
丹田から心の臓へ、心臓から四肢へと廻してゆく。
“ 創生の魔力とは、
『森羅万象の根源たるチカラ』…
神や天使、人…動植物などの
あらゆる命は当然の事。
果ては命もたぬその辺の石ころに至るまで。
世界に存在するありとあらゆる物質は、
かのチカラによって形作られておるのだ “
かつて天使のおっさんから聞いた話を反芻する。
( ならば この手に持つ剣は…
おれの『腕の延長』にできるはずだ。
…剣と己の『境界』を無くす。
そんなイメージを膨らませつつ、
指先まで浸透させたチカラを、ゆっくりと
己が剣へと馴染ませてゆく。
( そうか、そういう事だったのか…
実体が希薄らしいフーラズーラの
身体を斬るのに最も重要なのは、
おそらく切れ味や破壊力じゃあない。
創生のチカラを味方に付けるのに肝要なのは、
『イメージ』なんだ。
( おれも、奴も、この世界も…大元は同じ。
触れられない道理なんてない…はず。
☆ ☆ ☆

☆ ☆ ☆
閉じたままの まぶたの裏に、薄ぼんやりとした
フーラズーラのシルエットが浮かび上がる。
( あいつは多分、物質でも、純粋な生物でもない。 かといって幽霊みたいな精神体にも
ハッキリとは分類できないような
歪なバランスで成り立っている存在なんだろう。
おれ達の知る『理』で干渉出来ないのは
そのせい。
…ならばイメージしてやればいい。
奴の呼吸、律動、輪郭…
『あいつと世界との境界線』を探し当て…
剣に纏わせた無色のチカラを、
『あいつの存在そのものに干渉できる周波数』にまで微調整してゆく。
そんなイメージをしながら、
剣先へとチカラを伝え続ければ…
薄ぼんやりとしていた奴の影が、
次第に濃くなってゆくのがわかる。
( よし、いけそうだ…!
…あとは己の剣と腕を信じるだけ。
( 斬る。おれの剣は、
フーラズーラを必ず斬れる!
その瞬間ー…奴のシルエットは
ついに真黒に染まり切った気がした。
『 …捉えたッ!!
☆ ☆ ☆

☆ ☆ ☆
…目を見開き、横薙ぎ一閃ッ!!
果たして。
思惑どおり青い星光纏った我が剣は、
目の前の2体のフーラズーラを
見事に両断していたのだった。
『 うお、やりやがった!?
『 すごっ!
『 おおーっ!!
驚く仲間達を振り返り、口角あげて歯を見せる。
ドヤ顔というやつだ。
『 よっしゃ、気を纒うコツは掴んだ。
…なんとかなりそうだ!
そのまま勢いに任せて先に進もうとしたところで、
肝心な事を忘れていたのに気づく。
そうだ、あの突然なアドバイスが無ければ
フーラズーラは斬れなかった。
助言をくれた声の主を探して、
おれ達のやって来た街門の方へ視線を向けると…
『 お見事です…!
☆ ☆ ☆

☆ ☆ ☆
そこには、美しい白馬…いやいや…
☆ ☆ ☆

☆ ☆ ☆
その白馬に跨った、
まるで女性かと見紛ってしまいそうな、
流れるような白金の長髪をなびかせている、
褐色の肌で、エキゾチックな風貌の美青年がいた。
『 あ、貴方は…?
青年の纏った雰囲気や物腰に気圧され、
自然と敬語を使ってしまう。
このオーラだ。
ただの一般人じゃないのは
まず間違い無いだろうがー…
『 申し遅れました。
私の名は『リズク』。
この国のー…
王です。
『『『『 !? 』』』』
~つづく~