
“ ふふー…こんな時は…
息抜きっ!!
アレナも誘ってさ、
みんなでパァーっとやんの!
息、詰まっちゃうよ。
たまにはリフレッシュしないと。 “
エスタータの この意外な提案に
おれは一瞬、面食らったが…
冷静に考えてみると、
目から鱗が落ちた気分になった。
確かに、外の世界をアレナに知ってもらう良い機会になるかもしれないし…
クーにとっても、
今までゼニアスにばかり気を取られていたが…
アストルティアで手掛かりが
見つかる可能性も無いとは限らない。それにー…
そんな理由が無くたって、今の二人には
なんらかの気晴らしが必要な気もする。
そういう意味でも、彼女の提案は
的を得たモノに思えた。
“ 息抜き、か。
うむ、それ良いかもな。
丁度、調査隊から報酬出たし…
アマラークからも、フーラズーラの件で
別途に報償も頂いたしな。
ふっふ、先立つモノならある。
一丁、派手に羽を伸ばすのもアリだな! “
“ よしゃ、そーこなくちゃ! “
“ お前らな…
そんなだから金、貯まんねんだぞ… “
腰に手を当て、なかば諦め顔でため息を吐く魔族に
したり顔で振り返る吟遊詩人と鬼。
“ にひひ…『 財布が重すぎたせいで
魔物の攻撃避け損ねてやられた
盗賊の詩 』、聴く?“
“ 昔『鉄の金庫』がまだ無かった頃…
金を預け忘れて、
常闇の竜に数百万G消し炭にされて
哭いた先輩がいてな… “
“ わかったもういい。
じゃあ僕は…
そういう事なら『エルトナ食』を食いたい。“
“ おけー!じゃあさ…
『グルめぐり』にしよっか!
エルトナだけじゃなくてさ、
色んなとこで美味しい物、食べんの!“
“ おし、決まりだな! “
☆ ☆ ☆

☆ ☆ ☆
かくして。
キョトンとするクーを伴い、
半ば強引にアレナを連れ出して。
おれ達の、仕事を忘れた【グルめぐりの旅】は
始まったのだった。
まずは珍しく、ツキモリたっての希望で
エルトナ大陸へ。
アズランを目指したのは、
道中の岬で釣った新鮮な魚を食堂に持ち込んで
調理してもらう為だった、というワケだ。
☆ ☆ ☆

☆ ☆ ☆
『 見ろ…
この照り、黄金の輝きを…
散りばめられた白銀の刻みネギを…!
ついにお出ましだぜ…?
本日のメインディッシュ、
大豆を使った味噌料理の神髄!
『サバの味噌煮』様がよォ…ッ!
魔族の迫真の実況に、豪快に吹き出しながら
食堂のじいさんが料理の皿を運んでくる。
どうやらツキモリは彼に気に入られたらしく、
皿にちょっとしたオマケを追加してもらい…
それで何か通じ合ったらしい二人はニヤリと笑い、
お互い無言ながらも
軽快なハイタッチを決めるのだった。
その様子が妙におかしくて、
一同、笑い出してしまう。
『 さあクセっ毛!
お上がりやがれ…
冷めないウチによォ!
『 い、いただきますっ!!
ご機嫌な魔族から箸を突き出されるクー。
ゴクリと唾を飲みながら、
渡された使い慣れないであろう箸を
ぎこちなく使って、
恐る恐るサバの味噌煮を口に運んでゆく。
そして。
ひと口 含んで、クーは目を見開いた。
『 う、うまい!
美味いよっ!!
何ていうか…
甘い、辛い、しょっぱいとかだけじゃ
語れないような…なんか複雑な味で…
とにかくコレ、美味しいよっ!!
『 ふん。当たり前だ…
なんせサバの味噌煮だぜ?
『 なんなのさ、コレに対する
その全幅の信頼ww
『 そいつの…その味は生姜と、
味噌という最強の調味料が生み出す
芳醇な風味とコク…
そして煮られたサバが醸し出す
旨味とかいう成分が
絶妙に絡み合った味らしい。
煽る詩人を軽く無視しながら、
自らも味噌煮を口にして
うんうんと唸る魔族。
おれも食べるのは初めてでは無いが、
改めて口に運んでみる。
『 うむ、この濃いめの味がまた
銀シャリに良く合うんだよな。
何杯でもイケそうだ!
『 そうだ、光るキノコの佃煮だって
ここまで銀シャリには合わねェ。
無ェんだよ…魔界には、
ここまでのモノはよ!
☆ ☆ ☆

☆ ☆ ☆
『 うん、美味しい!
本当に深みのある味わいですね!
『 ああ、ゼクレスの湖だって
ここまで深くはねェ…!
『 それ言い過ぎ!?
…賑やかな食卓。
どうやら、クーもアレナも
楽しんでくれているようだ。
ひとまずは安心である。
~つづく~