食後の一杯。スッキリとした甘じょっぱさの
とこなつココナッツの杯をあおりながら見上げれば、抜ける様な深い青空と、
その下で湧き上がる真白な入道雲の
鮮やかなコントラストが目を攫ってゆく。
☆ ☆ ☆

☆ ☆ ☆
そんなジュレットの昼下がり。
晴天の下、太陽光を反射して光る
サングラスと黒いボディをシェイクさせ、
虹色のアフロヘアを揺らしながら、
不思議なロボット…パイセンは、
竪琴を爪弾く吟遊詩人と陽気に踊る。
パイセンが、先程の一連の会話を聞いていたのか
どうかはよく分からない。
だが彼は踊りながら、
おれ達の疑問に応えるかのように
おもむろに自分の事を歌い始めるのだった。
“ ガランドゥーなマイボディ!
満たしてったのは
ブラザー達の熱いソウルとアソビゴコロ!
ワラッタリ ナイタリ オコッタリ!
時にはコロンダリ ヘコンダリ…
でもオキアガッテまた ワラッタリ!
カラッポゥーなマイヘッド!
満たしてったのは
ブラザー達の熱いシャウトとアソビゴコロ!
タノシンデ カナシンデ ヨロコンデ!
時にはタタカッテ キズツイテ…
でもタチナオッテまた タノシンデ!
ガラスダマなマイアイズ!
満たしてってたのは、
ブラザー達の熱いラヴとアソビゴコロ!
ブラザー達のエブリデイ!
&ウェナのサマーブリーズ!
ハレノヒも アメノヒも アラシノヒも…
センサーにシミツイテ ヤキツイテ!
いつしかオイルちょちょギレタ マイアイズ!
フゥーーァッ!!
Its……!
マイハァアーートッ!! “
…爪弾かれるエスタータの演奏の終了に合わせて、
パイセンは一回転し、内蔵アームを天高く掲げ、
鮮やかなフィニッシュを決めるのだった。
『『『 ……… 』』』
静寂、のち、まばらな拍手。
☆ ☆ ☆

☆ ☆ ☆
『 詩人だね~、意外と!
パイセンって♪
『 まったく、良く分からん奴だぜ…
『 yeah!
ワカラン アッケラカン スッカラカン!
ツノツノボーイ!
…シャルウィーダンス?
『 踊らねェ。
『 オー、ツノツノボーイ!
アソビニン辞めるなんて
トンデモナイッ!
『 元々遊び人じゃねェ。
『 パイセン、調子乗りすぎると
燃料切れるよ。
感心する吟遊詩人。
ツキモリは相変わらずの塩対応だが、
パイセンに対する評価は少し改めたようだ。
残ったココナッツの果汁を一気にあおりながら、
おれは彼の歌の内容を整理しようとしたがー…
どうやらアレナに先を越されたらしい。
『 人々の営みに触れ続け、
記憶と学習を繰り返した結果、
自分でも知らない内に…
いつしか思考回路に自我…
『心』のようなモノが
形成されていた、という事でしょうか…?
『 おれにもそう歌ってたように聞こえたが…
でもま『遊び心』ってヤツを
真面目に解析しようとするだけ
野暮なのかもしれないな。
…他者との触れ合いの中で日々学習し、記憶し…
思い出を紡いで、その集積が人格を形作ってゆく。
改めて考えたら、
おれ達とそんなに変わるもんじゃない。
パイセンはもう、
パイセンという生き物なんだろう。
そうアレナに笑いかける。
錬金術師はまだ少し腑に落ちなさそうだったが、
この場はそれで納得してくれたようだ。
一息ついて改めて辺りを見回すと、
クーが呆けたような顔でパイセンを
見ているのに気づいた。
☆ ☆ ☆

☆ ☆ ☆
『 …………
『 ぃようクー、どうかしたか?
一声掛けると、クーはそれで我に帰ったように
ハッとなってこちらに向き直った。
『 あ、ザラ…!
別に…なんでも。
ちょっとボーっとしてた。
『 珍しいしな、パイセンみたいなメカは。
『 あっはは…そうだね。
曖昧に答えると、クーはバツの悪そうな
照れ笑いで頭を掻くのだった。
何か考え事でもしていたのだろうか。
きっと彼にも、色々と思うところがあるのだろう。
( ぼちぼち、クーの記憶探しも
再開しないと、な。
晴天のジュレット。
おれ達の休暇も、そろそろ終わりが
近づいてきていた。
~つづく~