
河童と天狗
…「やあ天狗! なんだい? 私に頼み事って」
「あやや? にとり、あなたねぇ。このお山では河童のあなたより私のほうが目上なのですよ? せめて『さん』をつけてください」
「わかったよー、天狗のあやさん。…あ、そうだ。この間、河童のみんなでチームを作ったんだ。それで私がチームの広報役に選ばれて。で、チームの宣伝に毎週出す予定の広報誌を書いてみたんだけど。あやさん。プロの新聞記者として、ちょっと読んでみてくれない?」
「へえ、おもしろそうじゃないですか。…どれどれ。週刊『あつまれ!河童の森』。どこかで聞いたような名前ですね。…ふーん。結構よく書けてるじゃないですか。機械いじりばかりかと思ってましたが、案外に文才もあるのですね」
「えへへ。…それで相談なんだけど。この広報誌を、お山の掲示板に張り出してもいいかなって思って」
「そうですねぇ。こちらからも頼み事がありますし。まあ、今度私のほうから大天狗様にお話ししておきましょうか」
「やったぁ! これで新しいメンバーも増えるかなぁ。…あ、それで、頼み事って?」
「えっとですね。博麗の巫女が持っている『陰陽玉』と同じものを二つ作ってほしいのです。そして、ひとつを私に、もうひとつを椛(もみじ)に渡してほしいのですよ」
「陰陽玉? まあ、実物を解析してみたら作れるかもしれないけど。あの巫女が素直に貸してくれるかなぁ。それに、陰陽玉なんか椛に渡してどうするんだい?…まあ、クライアントの依頼だから深くは詮索しないけど。あの堅物の哨戒天狗が、そんな怪しげなものを受け取るとは思えないけどね」
「それなら大丈夫ですよ。巫女のほうは、このお金を『初穂料(はつほりょう)』として神社に納めれば、2、3日くらいは喜んで貸してくれるでしょう。椛のほうは…。そういえば、あなたはあの子と詰将棋をしていましたね?」
「ああ。相手が弱すぎて、こっちが45連勝中だけどね」
「それはそれは豪気なことです。では、つぎにあなたに負けたら、陰陽玉を受け取るように椛に約束させてください。あの子は約束は絶対に守りますから」
「うんまあ、なんだかよくわからないけどそうするよ。陰陽玉のほうは、半月もあれば作れるんじゃないかな。そうと決まれば、さっそく仕事に取りかかるか。がんばるぞー!」
「…あやや。もう行っちゃいましたか。頼もしいものですね」
天狗はそう言うと、翼を広げて夜寒(よさむ)の闇夜に消えてゆきました。