冥王ネルゲルを打倒すると、いよいよレンダーシアに渡れるようになる。こちらも色々と事件や設定があっておいおい書いていこうと思うのだが、エテ公が暮らすエテーネ村ほどではないにしても、とにかく五大陸に比べてレンダーシアの文明は遅れている。昔は栄えていたらしいが、天変地異でも起きた後の世界で人々が辛うじて文明を維持していますというレベルだ。どうやら五大陸以上に事件や争いや災害があったようだから、これもいずれ語られるのだろうと思う。
レンダーシアにはまともな街道がほとんどない。だからまともな交流もない。なにしろレンダーシア唯一のレビュール街道、グランゼドーラから三門まで繋がる軍道にしてメルサンディの麦を運ぶ主要インフラだが、これがあちこち荒れて放置されている有り様だ。ポピンプ(プクリポ)すらオルフェア近郊で栽培している果樹園の収穫物を、馬車でも列車でも使ってメギトリスリスリに納めているだろうに、レンダーシアの人間はそのアニマルたちにも劣っている。
「おい ばんじん ども。うほうほ いってみろ」
そして本来、街道というのは拠点と拠点を結ぶ道だから、地形に沿って作られたとしても必要なら地形を貫いたり地面を舗装して敷設しなければならない。その意味で、レンダーシアに敷かれている街道はグランゼドーラから三門に至るレビュール街道と、三門から穀倉帯メルサンディに至るワルド水源の木道だけだ。アラハギーロの周辺には舗装された街道の跡があるが、デフェル荒野の西に繋がっている道を見ると、あるいは過去に滅んだジャイラ王国に向かう道として整備されたのかもしれない。セレドに至るセレドット山道など、山道とは名ばかりの単に「人が通れる場所」でしかないというシロモノだ。
この状態ではメルサンディ、セレド、アラハギーロ、グランゼドーラの間を普通のヒトが行き来する手段なんてないと考えたほうがいい。似たように山岳と砂漠で分断されているドワ大陸なら、ガタラとドルワームの行き来に列車を使うことができる。彼らは岩盤を貫いて列車を通したが、列車がなければその道は街道として人やモノが行き来するために使われていたはずだ。
話をレンダーシアに戻すが、セレドの町からグランゼドーラに向かう道を思い浮かべてみる。アラハギーロを経由するなら谷を渡された吊り橋を越えて、雨が降れば封鎖されそうな洞窟を抜けなければならない。ローヌ樹林帯を回る道はもう少しマシに思えるが、ここも地面に板が貼られているだけで遊歩道に毛が生えた程度の道だ。
ワルド水源までたどり着けば、ひたすら登り続きとはいえ整備された木道から三門にたどり着くことができる。ここまで来て道の半ばというわけだ。このレンダーシアでは、馬車すらもグランゼドーラから出る一台きりで、これが定期便になっていないことはグランゼドーラ行きの馬車がないことからも想像に難くない。
バージョン2を進めたヒトなら考えたことだろう。セレドの子供たちや、アラハギーロの兵士たちが帰る方法はないのだろうかということを。そして気づいたヒトもいるだろう。帰る道は存在する。彼らが三門から先にあるココラタの浜辺までたどり着くことができれば、グランドタイタス号に乗って海路グランゼドーラに向かうことができるのだ。グランゼドーラまで行けば、おそらくそこから彼らは自分の家に帰ることはできる。セレドの子供たちが、親に会うことができる。
だがそれこそ無理な話だ。彼らは主人公たちのような、旅慣れた、戦い慣れた者たちとは違う。子供や町の人が長い距離を移動するのがどれほど難しいかなんて、考えるまでもない。たとえばレベル10程度のパーティで、移動はすべて走るのではなく歩くスピードで、セレドからココラタの浜辺までモンスターがうろつく中を踏破できるかといえば、とてもではないが不可能だ。
アラハギーロの兵士たちなら、隊列を組んでデフェル荒野を行軍できるかもしれない。だがセレドの子供たちが峻険な山道や、遊歩道に毛が生えた樹林帯を抜けるなんて正気じゃない。街道がないとはそういうことだ。広くて平坦で見晴らしがよい街道が敷かれているからこそ、ヒトやモノが安心して行き来することができて交流が生まれる。そして交流もなければ、レンダーシアの人々はココラタの浜辺にグランドタイタス号が着いていることすら知らない。
ためしにエテマメはセレドの町を出て、ローヌ樹林帯から穀倉帯を抜けて、ワルド水源から三門を経てココラタの浜辺まで歩いてみたことがある。グランドタイタス号に乗るとレンドアに、グランゼドーラの港に行くことができる。ルーラストーンやブレイブストーンを使わないでも、グランゼドーラに到着することができた。
そしてこのことをエテマメがセラフィやリゼロッタに伝えることはないのだろうと思う。