ナドラガは七柱の神様たちの長兄だから、必要なら戦ってでも世界の指導者になるべきだ。教団の目的はそのナドラガの復活で、ナドラガを復活させるには領界を繋げる必要があって、それが解放者の役割だ。エテマメが聖都エジャルナに来たときから、教団はそのことを公言してるし隠してもいなかった。
もと解放者エテマメが教団に協力してるのは、そんなことはどうでもいいけどナドラガンドの竜族が苦しんでいるからだ。目の前で困ってる人を助けない理由がない。同じ考え方をしているのがエステラさんで、彼女は教団の目的よりも、目の前で困ってる人がいたら放っておけなくなっちまう。
お前なんか解放者じゃないと言われたエテマメがやってきた嵐の領界。荒れ狂う風と雷と毒を逃れて、人々は地下に逃れて暮らしている。シロウズことシンイ臭の強いクロウズがいて、この世界では予知が効かないとかあいかわらず予知なんぞに頼るシンイっぷりを発揮しているが、そんなことよりアンちゃんとラグアス王子にようやく再会できた。彼らは国に残された最後の王族で、彼らになにかあるとグランゼドーラもメギストリスも滅びるのだが、それでも自分たちをさらった相手のために戦うとか、あいかわらずいい人たちすぎるよね。
エテマメは気楽な立場だけど、きみたちはそれでも戦っちまうんだから尊敬だよ。
話を聞く。教団に抵抗する疾風の騎士団は、姉ミムメモが竜族に呼びかけて結成した。教団の主張は竜族以外から見れば首を傾げたくなるものだから、突っ走る性格のミムメモが突っ走ったことは容易に想像できる。シロウズはそれを支える自称参謀なのだが、相変わらずこいつは自分の主張がない。決して無能ではないのだが、自分の考えがなくて判断力がないのはやはりシンイだなーと思う。
ここまでの段階で、エテマメは教団を正義だと思ってないし騎士団を正義だとも思ってない。ともだちを助けにいく。困っている人がいたら助ける。それだけだ。領界を繋げないとともだちを助けることができないから解放していただけだから、教団に抵抗する理由もないし騎士団の邪魔をする理由もないのだ。
だがそんなエテマメだからこそ許せないことがある。それは他人の意思を否定することだ。
理由があって他人とぶつかるならぶつかればいい。それは野蛮な殴り合いにしかならないが、冥王ネルゲルの言い分はわかるから殴り合いをして解決した。大魔王マデっさんは個人的には楽しいやつだが、彼がトーマ王子の意思を否定したことは許せない。フラウたちをさらったアンリシャルパンテロだって、アンちゃんやラグアス王子をさらったミムメモだって、グランゼドーラの船員を洗脳したシロウズだってマデっさんの同類なのだ。
教団がヒューザやエステラさんを洗脳して操ったことは、エテマメには絶対に許せない悪いやつのしわざだ。エテマメは悪いやつをぶん殴るし、ついでに洗脳されたヒューザやエステラさんとも殴り合いになったが彼らは許してくれるだろう。むしろエテマメに殴りかかったことを彼ら自身が後悔するだろうから、ごめんね殴り倒しちまったよといってお互い様ですませることにする。
ちょっと話題をそらす。神獣の森のてっぺんにいた巨竜樹との戦闘だが、こんだけスキだらけの相手だと占い師の愚者魔王魅惑ヒドラリバートヒドラコンボを狙う余裕があって、4999ダメージx2でとどめという爽快な勝ちかたをすることができたのだが、うまくできたからこそ動いてる相手にこんな余裕ないよなーとも思えてしまう。守りを固めて絶対に崩されない状態を作り、サーシャさんセレネさんリクオに倒してもらうのがやはり安定する。エステラさんやヒューザはもちろん、翠嵐の聖塔てっぺんでの三つ巴戦もこれでふつうに勝つことができた。
戦闘後に、聖塔のてっぺんから落とされたエテマメはこれからしぬのかなあとか思ったが、身を呈して助けてくれたのが竜化したエステラさんだった。これはもうエステラさんを知っている人なら誰でも同意してくれると思うのだが、彼女だったら、竜化していなくても身を呈してエテマメを助けようと飛び出したのだと思う。
神様がなにをやらかしたとか神の器とかどうでもいい。さらわれた六人も、エステラさんも、目の前で困っている人を助けるのに、理由なんか考える前に飛び出すだろう。それはエテマメだっておんなじだ。
だからもっかいさらわれたみんなを助けに行く。行き先は各領界の祠と聖都エジャルナの大神殿。ミムメモも捕まってるらしいからついでに助けに行く。シンイはどうしたいのか知らないが、お前が決めてお前の好きにすればいい。
そういえばあんたしんじゃうのよとか言われてたのを、このときようやく思い出した。