まず一般的に「時空」という概念は一般的じゃない。世界には絶対的なたったひとつの時間が流れているのじゃなくて、それぞれのひとたちに別々の時間が流れてる。妖精の森に足を踏み入れて、ゆっくりと進む時間をすごせば外に出たときには未来になっている。外の時間は自分とは別に進んでいるからだ。この「妖精の森」現象は現実の世界でも実現する。時間と空間は同じもので、これを合わせて時空と呼んでいる。
では「ルーラ」が存在する世界ではどうか。
この世界ではすでに遺失魔法になっている、ある場所から別の場所に転移する術だ。使うにはルーラストーンという道具が必要で、あらかじめ決められた場所と場所のあいだしか転移できないようになっている。では「場所」とは何か。時間と空間が同じものなら、そのあいだを移動する時空転移の術がルーラということになる。ふだん使われてるルーラは、同じ時間の・別の空間に転移しているというだけだ。
そしてメガルーラクエストでリンクスが言ってた通り、転移は飛ばされた者に後遺症すら与える術で、影響を受けないマメミムのような者は珍しい。メガルーラとは何かといえば、かつて王立アルケミアで研究されていた技術をリンクスが発掘したもので、彼が捕まった遺跡にはアルケミアと同じオブジェクトが立っている。
つまりルーラとは時渡りの術そのもので、時渡りの末裔だけがルーラの悪影響から無縁でいられる。だけど安全性が確保された経路だけを移動するルーラストーンや、術を身につけたバシっ娘の一族なら時渡り以外を安全に飛ばすこともできる。ちなみにルーラは時渡りが起源だけど、バシルーラはアストルティアに介入したバラモスからバシっ娘の一族が奪ったものらしい(討伐モンスターリストより)。
閑話休題。
ルーラやエテキューブは時渡りの力を用いてる。強力で高精度なルーラは過去にも未来にも飛べる。マメミムは過去にも未来にも行くことができるし過去を変えることもできるけど、だからといってすでに起きたできごとを変えることはできない。500年前のグレンに行ってエルジュを改心させる(過去を変える)ことはできるけど、エルジュが改心した(すでに起きた)ならそれをなかったことにはできないのだ。
だからタイムパラドックスで語られる「時渡りが過去にさかのぼって自分をころす」ことは不可能で、理由はもちろん「自分は過去にころされたことがない」からだ。だけど自分が未来の自分に出会っていたことを、そのときになって気づくことはある。ドラクエ5でもそんな場面がある。
そしてマメミム以外には彼らの時間が流れている。たとえば盟友カミルはVer.4古グランゼドーラでマメミムと出会ったあと、一千年後のVer.2王家の迷宮でマメミムと出会うことになる。古グランゼドーラで出会うカミルはマメミムにとっては二度目だが、カミルにとってマメミムと会うのは初で、これらは互いに矛盾しない。
ここまではほぼ間違いない?(と思ってます)
問題は、時渡りが歴史を変えることで矛盾が生まれることだ。矛盾はちいさなものかもしれないし、フルッカの人生を変えるくらい大きなものかもしれぬ。キュルルが言った「歴史の修正力(ぢから)」とは、エルジュの歴史を変えたことでフルッカの歴史が矛盾のないよう修正されたことではないか。黒衣の剣士がいろんなチカラを奪ったことで、矛盾のないよう修正されていく未来のことではないか。
ならば言葉遊びのつもりでーーー
滅びたグランゼドーラを見た事実は変えられないけど、グランゼドーラは滅びなかったという未来に到達することはできるかもしれぬ。自分が出会った事実は確定した歴史になるから、「滅びたけれど滅びなかった」未来に到達できるかどうかがエテキューブで旅する目的のひとつだった。
だけどこの世界には、確定歴史を覆した例もある。黄金のパラディンには「ズーボーはんが帰ってくることをジェニャは知ってるけど黄金のパラディンは知らない」という矛盾がある。たぶんこれのために、金パラさんは時渡りの呪いに近しいことを自らに課したのではないかと思うけどこれは想像でしかない。
そして
目の前にあることを変えることで未来が変わるなら、それは変化する時空を観察できる上位概念があるということだ。時空の変化を外から見れば、可能性世界とか運命曲線とか因果律とか呼ばれるものが見えるかもしれない。ふろしきがどんどん広がるけれど、こむずかしい理屈なんかどうでもいい。目の前にあることを変えることで未来は変わるのだ。
目の前で困ってるひとがいたら「はい」と答えてクエストを受ければ、大陸も時空も運命曲線も越えて世界を救うことができるかもしれない。それがこの世界における絶対不変の法則になっている。