あなたは試練を受けるのです。いきなりマメミムの目の前に現れると自分はせっかちだからと言い訳するのはさだまさしだった気がするが、くわしい説明もないまま「趣味の悪い」白灰の試練を攻略すると、黄金と深翠と紺碧を含めた四天の星巡りとやらに挑まされることになる。ひとを呼びつけて試練と言われてもなんのことやらさっぱりで、これがはやりのデスゲームというやつか。
まずは紺碧の試練から。
試練の内容は審判次第ということで、待っていたのはアカンティスとかいうぼさぼさ髪と類人猿のような体型をした羽つきだ。たぶんマメミムが聞き違いをしたらしくチンパンなのだろう。このチンパン、悪人ではないが態度が悪い無能なやつで、試練用キングスライムがばらばらにされてどうしようかというところ、ちょうどやってきたマメミム&英雄候補のリナーシェにスライム集めを押しつける。
リナーシェも陰謀家のくせに悪人になりきれない性格で、ばらばらにされたスライム集め競争を引き分けにするつもりなのはわかったから、すなおに連れまわされることにする。利用しているつもりでマメミムに助けられると意外な顔をするあたり、これがフォステイルなら「君なら助けてくれると思ったよ」と悪びれないのがただしい陰謀家というものだ。悪人になりきれない悪人は、ひとをだますことはできても自分がだまされることに気づけなくなるから気をつけたほうがいい。
黄金の試練。
ここの審判がクルットルというやつで、天星郷を動かす「感謝のエネルギー」が詰まったゴールドを集めてこいという。自分のしごとを他人に押しつける無能ぶりはチンパンと変わらないけれど、ぞっとしたのは感謝を単なるエネルギーとしか見ていない、ガナン帝国と同じ視点を疑問に思わないきちがいぶりだ。これがゴールドではなく人間から直接エネルギーを抽出したほうが効率的なら、こいつは迷わず人間電池を発明するだろう。
同行した英雄候補、ドワーフの三闘士は基本的に善人で、困ってるやつを助けない理由はないという長兄カブのいいひとぶりもラダ・ガートと変わらない。厄魔ポヴァディウスを助けるために、試練に課された100万ゴールドを惜しみなく差し出したカブに対してもう一度かせいでこいというクルットルの金の亡者ぶりに呆れるが、羽つきにモラルなど期待してもしかたない。乱暴なだけのモラハラチンパンに比べても、立場を利用したパワハラをしてくるだけより悪質というだけだ。
最後に深翠の試練。
意図した順番ではないけれど、ここの審判フードデリが他のふたりがおよびもつかないサイコさんだった。英雄候補ハクオウの生涯も性格も承知の上で、タマゴの生育が失敗することを見越して必要な情報をなにもあたえない。タマゴを育てろと言われただけで、独り立ちをさせろと言われなければ、我が身を賭して災厄の王に散ったハクオウが過保護に育てるだろうことがわからぬはずがない。
つまりこいつは意図的に失敗させることを楽しんでる。
挫折からの成長を促すことが目的かといえば、用意している救済策があまり考えられてるものでもない。たんにこうすればハクオウのトラウマを刺激できるよねと考えて、悪意もなくそれを無邪気にやってのけただけだろう。
これが考えすぎでないことは、サブクエで用意されていたバナナまるのみ羽つきの件を見てもわかる。一見してものごしのやわらかい言動をするフードデリが、彼女の料理を楽しみにしてはバナナをまるのみにしてのどを詰まらせている羽つきに対して、それを楽しみにして流し込むためのミルクを用意しているのだ。こんなものはやさしさでもなんでもない。どうせしなないからのどに詰まらせる姿をかわいいわねと楽しんでるだけで、悪意のないサイコさんぶりではこいつが際立っている。
白灰では法のない世界でいちばん悪いやつを決めろという理不尽を見せられた。紺碧では粗野な態度の無能を手助けさせられた。黄金では感謝よりも人助けよりもゴールドだと主張された。深翠では他者を追い詰めるさまを試練だと見せつけられた。ラダ・ガートならずともどれもこれも「趣味の悪い」としか言いようがない。
そしてこの、四天の星巡りとやらの判断はチンパンたちの胸一存に任せられているそうで、つまり明確な基準はない。これは後にわかることだけど、雁首よせあつめて学級会をしている羽つきの社会でもっとも重要なコンセンサスはえんがちょを喰らわないことで、「これは誰誰くんがいいといったもん」と責任を分散することだ。試練をクリアすることで他の羽つきから文句を言われないようにする。それ以上の意味もそれ以下の意味もない。
茶番だなあと思うけど、こんな茶番を演じてまで羽つきどもが何をしたいのか。
そしてこんな茶番を利用して、
羽つきどもに何かをさせようとしている輩の存在を思わせるのだ。