その1から続きます。
それからしばらく経って、彼女が私の所に相談に来ました。すこし口調が重く、自分が掲げたイベントが大きすぎて実現できるか不安が先行しているようでした。そして、その悩みを尊敬している人に見破られたようです。そしてこういわれたそうです。
「自分のやれることをやればいいの。もし私にできることがあるなら手伝うから。」
いい言葉ですね。こう言われるのが正直うらやましいです。
私は彼女にこう言いました。
「盛り上がっているところを、押さえる、本当にあなたのことを心配してくれている人にしか言えないことです。私からも「ありがとう」と言っていたと伝えて下さい。私が言うべきことを言ってくれたのですから。」
そういったら、顔は見えないですが彼女は泣いていることに気がつきました。
さて、お気づきの方もいると思いますが、すでに彼女の秋祭りに巻き込まれていて、ついにネタ出しをしなければならなくなりました。やりたいことは、おにごっご、ドルボードレース、クイズと言っていましたが、何か新しいことをやろうとするたびに、ちゃんとできるのかという不安に彼女を駆られていて、従来の発想から抜け出せない状態でした。
すごくマイナスの思考をしていて彼女の中で「成功させること=失敗しないこと」という図式になっていました。
もちろん失敗しないことも大事なんですが、私は「誰もできなかったことを1%でもできたら成功だ。」ということを彼女に言い続けました。さらに、だれもできなかった事というのは、天才がひらめくようなものではなくて、身近にごくありふれている発想を実現するにすぎないという事も併せて吹き込みました。
たとえばドルボードレース、現実世界に例えると何が近いでしょうか。私はF1や駅伝を例に、彼女にこういうドルボードレースができたら楽しいよねというのを吹き込みました。
F1は、予選をやって予選の順位で決勝戦を行います。そしてF1の醍醐味は、高速で駆け抜けるストレートと抜きつ抜かれつのデッドヒートです。そして駅伝は、多くの人がたすきをつなぎ、長い距離を走って行きます。
さて、観客はどう楽しんでいるんでしょうか。
1つ目は、観客は、現地で生で見ることを望んでいて、たとえ自分の前を一瞬しか通り抜けなかったとしてもある程度満足します。2つ目は、ずっと自分が応援する車やランナーを見続けたいという欲求もあり、それがバイク実況での駅伝レポートや、駅伝ランナーの横を走り続ける観客がいます。
3つ目は、テレビの実況のような聞いてるだけでも楽しめるものも求められています。
この要素3つの全部達成できたら、F1よりもおもしろく、駅伝よりもおもしろいドルボードのレースを行うことができます。そんなことできるのでしょうか。できないというのは簡単です。だから、やりたい夢のようなことをまず思い浮かべ、そこからできないことを引く、そして、残った要素を実現すれば、誰もできなかったことを1%でもできることになり成功なわけです。
私がこの日彼女に言ったことは、ひとつです。
「なんで失敗することばかり考えるんですか。もっとワクワクすることを考えましょう。考えるあなたが楽しくなかったら、だれも楽しめないでしょうに。」
この一言は、かなり大きかったと思います。あとは何も言わなくても彼女の中でどんどんイベントができ上がっていきました。ドルボードレースからドルボードを取ったのは、観客がドルボードにのって、自分が応援するランナーについて行けることを実現することと、運営がドルボードにのってレースを楽しめるというアイディアでした。
「すごく楽しそう!実現したい!」
そういう彼女がとっても印象的でした。あとは私が何もしなくても、すべての彼女がイベントを作り上げました。
その後、実況を彼女の尊敬する人が担当し、イベント運営者でありながらレースを楽しむことができるという仕掛けを彼女自身でつくりました。この「炎のスピードキング決定戦!」は、あらゆるところで私と彼女のアイディアが詰まっています。
その3に続く