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フォースマエストロ

ミラージュ

[ミラージュ]

キャラID
: DX235-898
種 族
: ウェディ
性 別
: 男
職 業
: 魔法戦士
レベル
: 130

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ミラージュの冒険日誌

2014-02-03 01:29:30.0 テーマ:その他

なりきり冒険日誌~番外編・猫の島には帰れない(1)

「絶対嫌ニャーーーー!!!」  ジュレットに猫の叫びがこだました。部屋の角でふさふさとした毛皮が震えている。やれやれ、これでは先が思いやられる。
 ここは白亜の臨海都市。居候のニャルベルトが家の隅で置物と化したのにはわけがある。
 某月某日。私の家に一通の招待状が届いた。
 差出元は猫島。ご丁寧に肉球のスタンプ付きである。猫島を治めるキャット・マンマー殿公式の文書にだけ使用を許されたこの紋章は猫島の各所で見ることができるが、ジュニアの一件から国交の正常化が進められているとはいえ、ウェディの街ジュレットには、まだまだなじみの薄いものだ。
 わざわざこんな招待ごとを催すというのも、それを馴染のあるものに変えていこうという政策の一環なのだろう。
 内容はこうだ。

 猫島において武芸の技を競い合う競技大会を行う。ひいてはヴェリナードよりの参加選手としてミラージュ殿にもご足労願いたい。

 我がヴェリナードは猫魔族との協調の証として、レンダーシア探索を魔法戦士団の私とニャルベルトに共同で行わせている。こういう催しごとには最適の人選というわけだ。
 実質的にディオーレ女王陛下からの指令とも言えるこの参加要請。私としては断るという選択肢は無いのだが……

「無理ニャ! 絶対行かんのニャ!!」

 どういうわけか、肝心のニャルベルトがこの有様だ。尻尾はくにゃりと曲り、猫耳はへたれて倒れ、体はブルブルと震え、抜け毛がパラパラと部屋に舞い散る。まったく、誰が掃除するんだ?

「お前にとっても主君からのご指名だろう」
「ご指名でもろく指名でも無理なものは無理ニャーーー!!」
「だから、何が無理だというんだ」

 ぐるぐるぐる……と小刻みに喉を震わせながらニャルベルトは手紙の一部を指さした。参加選手一覧の部分だ。そこに記された名前は……

「キャット・リベリオがどうした?」
「無理ニャ!」

 フーッ!と荒い息を吐き出す猫。何があった……。
 私は手元の資料をパラパラとめくった。任務の間、各地で聞いた噂や実地調査、聞き込みからまとめた人物録だ。
 キャット・リベリオは猫島のジュニア騒動の首謀者。罪人として一度は流刑となったが、ある事件をきっかけに罪を許された。その他、実は血統書付であることなどが記録されていたが……。ふと、その片隅にメモ書き程度に記された内容が目にとまった。

「……かつて、猫魔道に無理矢理剣を持たせて剣術を教えようとしたことがある……」
「ニャーーーーーーッ!!!!」

 ニャルベルトが頭を抱えた。
 ……どうやら……

「お前が当事者だったのか……」
「うう……あの時のことを思い出しただけで尻尾が縮み上がるニャ……」

 少しずつ聞き出したところによると、大将気取りのリベリオは剣術に向かないニャルベルトをスパルタ式で鍛え上げようとしたらしい。まだまだ未熟だったニャルベルトは、半ばいじめられっ子だったようだ。

「と、いうわけで吾輩は病欠するニャ!」
「そういうわけにもいかんだろう」
「嫌ニャ! また皆の前でアイツに苛められて笑われるのは嫌ニャーーーー!!!!」

 涙ながらに訴える猫。どうも、トラウマという奴らしい。
 だが、既に招待状は届いたのだ。ここで逃げ出せば、彼の名誉はそれこそ二度と島に顔を出せないほどに傷つけられることになるだろう。もはや逃げ場はないのだ。
 私はそっとニャルベルトの耳をなでた。毛並の触感が心地よい。その奥に熱く脈打つものがある。

「……ニャルベルトよ。お前はもう一人前の猫魔道だろう」
「ニャ……」

 ぴくりと耳を震わせたまま顔を上げようとしないニャルベルトに、更に私は言った。

「かつてのお前とは違うところを見せてやればいい」
「んニャ……なんかうまく言いくるめようとしてるニャ?」
「まあ、半分はそうだが……」

 半分は本音である。共に修行をしてきた私にはわかる。少なくとも魔力だけなら一流の魔法使いにも引けを取らないくらいまで成長しているはずだ。
 私自身、猫島で行われる御前試合に参加するのは今回が初めてではない。その時に相対したリベリオの印象からすれば、ニャルベルトの力は十分に通用すると思っている。
 むしろ気になるのは私自身の力が通用するかどうか。
 いくつかのパーティ構成を考える。どの場合でも私の責任は重大になるだろう。

 こうして、渋る猫をなだめすかして、私は参加承諾の返事を猫島に送った。
 ほどなくして決戦の日は訪れる。 
 いざ猫島へ。ジュレットを旅立つ我々を見送るのは、いつもと変わらないウェナ諸島の青空だった。
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