なりきり冒険日誌~人形たちのラグナロク(3)
人形たちがヴァルハラと呼ぶ屋敷。つまりアズランは領主タケトラの館へと我々は帰ってきた。
その道すがら、久しく会っていなかった風乗りのフウラと再会した。すれ違いになってしまったが、風乗りとして勤めに精を出しているようだ。まだ幼く気ままなところもあるが、先の一件で大分成長したようだ。
もっとも、父と口論になってへそを曲げてしまうあたり、まだまだ子供ではあるようだが。それも健全と言えば健全なことだ。
その領主タケトラだが、近頃ではシグルドらが娘の部屋で起こす騒音に気づいたようだ。さすがに自分の屋敷が人形たちの住処となり、ヴァルハラなどと命名されているとは、予想だにしていないだろうが……。
思えば、風乗りとは不思議な才能だ。その不思議な力を秘めた少女が大事にしていた人形に奇妙な魔力が宿ったとしても驚くべきことではない。さらに私は、戦士シグルドの名を初めて目にした場所を思い出していた。
知恵の社。学問を志すエルフのエリートが集う学び舎であり、かつてフウラが通っていた場所だ。そこにおさめられた一冊の本が、戦士シグルドの物語を伝えていた。
次にフウラに会うことになったら、そのあたりの話を聞いてみたいものだ。
人形たちのラグナロクは、彼女のままごと遊びかもしれないのだから。