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フォースマエストロ

ミラージュ

[ミラージュ]

キャラID
: DX235-898
種 族
: ウェディ
性 別
: 男
職 業
: 魔法戦士
レベル
: 130

ライブカメラ画像

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ミラージュの冒険日誌

2019-11-23 18:01:19.0 テーマ:その他

遥かなる猫の呼び声(4)~なりきり冒険日誌【※デスマスクエストの記述やや有り】

 熱を帯びた大地に海が波を寄せ、白煙をくゆらせる。
 立ち込めた蒸気は溶岩に熱され、陽炎を生む。歪んだ空気の彼方にスターキメラの影が舞う。
 これがボロヌスの溶岩地帯。ここを訪れた旅人は、この世の果てを見た気分を味わう。
 だが、その先を見せようとする者もいる。
 この日、ボロヌスは生と死を司る死霊術師たちの決戦の舞台となった。  狂気に満ちた演説をぶちまける死霊王に対し、ネリムは胸のすくような見事な啖呵を切って見せた。術師としてはどうか知らないが、喧嘩の売り方と買い方は既に一流と言えそうだ。
 両者、使役すべき死霊達を呼び寄せ、戦いが始まった。

 なかなかの大捕り物と言えた。陽炎に揺らめく死霊たちの姿は文字通りこの世の者とも思えず、両者の操る怨霊同士のぶつかり合う様は、そこらの恐怖劇を軽く凌ぐものだった。
 だが、デスマスターは常に死者と向き合ってきた。時に死者の無念を晴らし、時にその手を借りる。生と死を繋ぐ存在なのだ。
 怨霊を手先として弄ぶ死霊王とは違う。それが勝敗を分けるだろう。
 今まさに、デスマスターの手から致命の一撃が放たれようとしていた。
 気合一閃!

「サクリファイス!」

 爆音が轟き、デスマスターに付き従っていたゴーストが大爆発を起こした。自爆戦法!
 白煙が爆炎に変わる。敵はかなりの痛手をこうむった。ようだが……
 ……こういう使い方は死霊を怒らせるのではないか?
 熱気とは裏腹にゾッとするような悪寒が背筋を走った。呪詛……

「デスパワー充填」

 デスマスターはこともなげに頷くと敵将を睨み据えた。

「死者を弄ぶ死霊王、覚悟しろ!」

 ……どうやら死霊術師の倫理観は私の理解の範疇を越えているらしい。  こうして敵将は倒れ、事件は一件落着と相成った。
 残念ながら犯人逮捕とはいかなかったが……行き先が牢獄が地獄かの違いだ。ヴェリナードへの報告書が多少面倒になったが、良しとしよう。

 リルリラによれば、拠点に戻ったネリム達は上司への報告を行ったらしい。私の見ていない所で、いつの間にやら、だ。

「あの二人、いろいろあったんだ……」

 リルリラは感慨深げにそう言った。
 私は二人のデスマスターを見比べた。さほど長い付き合いではないと言っていたが……。リルリラは微妙にずれた視線で私と同じ方向を見つめていた。首をかしげる。エルフは肩をすくめた。

 それはまあ、良いのだが……一つ誤算がある。
 ネリムは犯人に続き、証拠物件まで消去してしまったのだ。焦る私の裾をリルリラはふくれっ面で引っ張った。

「もうっ、余計なこと言わないの!」

 猫のファンファンも静かに頷いた。

「確かに、過去が積み上げてきた遺産が今、失われたわ。未熟で無思慮な行いかもしれない。もしあの子がベテランのデスマスターだったら、同じことはしなかったかもね」

 そして彼女は、若きデスマスターをゆっくりと見上げた。

「でもこれが、あの子だけにできる仕事」

 井戸の底はしんみりとした空気に包まれた。デスマスター達、エルフ、猫。何か共通の理解があったらしい。
 私だけが蚊帳の外だ。岩天井を見上げる。少しは霊感を鍛えた方が良いのだろうか。
 誰かが笑った、ような気がした。
 冒険者の方のデスマスターは後始末を終えると次の冒険へと旅だった。
 一方ネリムはここを拠点に探偵業を始めるそうだ。死霊事件専門。いわば霊界探偵、それともゴーストスイーパーか。

「なら開業祝いに一つ仕事を依頼しようか」

 私の提案にネリムは飛びついた。が、私はその鼻先に書類を突きつける。

「調書だ」

 少女は鼻白んだ表情でそれを見つめた。
 今回の事件の報告書を作るのに、専門家のお墨付きを貰いたい。

「犯人も証拠も消してしまった君だ。それくらいは頼んでもいいだろう」
「私、デスクワークとか苦手なんですケド……」
「探偵を開業するなら、魔法戦士団を得意先にしておいて損はないと思うぞ」

 ネリムは不満げな唸り声を上げた。……と、誰かの笑い声が聞こえた。

「頑張りなさい、新米ちゃん」

 私とリルリラは顔を見合わせ、猫も首を振った。
 カチリと音を鳴らして動きを止めたのは、古ぼけた蓄音機だった。

 ネリムは目を丸くし、次に呆けたように口を開け、そして瞳を閉じ、頬を膨らませて口をとがらせ、最後に泣くような笑みを浮かべた。

「ペン貸して! 書くから!」

 彼女は私の万年筆を奪い取ると猛然と机に向かった。また誰かが笑った、ような気がする。
 蝋燭の炎が揺れ、影が柔らかく彼女の肩を撫でた。

「これからあの子の進む道が、天の星のように、輝きに満ちたものになりますように」

 どこか遠い場所を見つめて、猫が呟いた。

<完>
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