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フォースマエストロ

ミラージュ

[ミラージュ]

キャラID
: DX235-898
種 族
: ウェディ
性 別
: 男
職 業
: 魔法戦士
レベル
: 130

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ミラージュの冒険日誌

2020-02-02 15:55:22.0 2020-02-03 20:07:41.0テーマ:その他

麒麟児が来る!~なりきり冒険日誌

 高みから見下ろす冷酷な双眸が、私の姿を睨み据える。
 巨体、巨翼、そして龍のように長い首。闇のキリンジとはよく名付けたものだ。
 その巨体が二本足で直立し、棍を構える。魔界にあって類まれな素質を示し、しかし誰にも認められなかった一族の成れの果てが彼らなのだという。
 その境遇に涙するのは自由だが、少なくとも今、我々が憐れむべきは彼らの標的となった自分自身の境遇である。  ジャリムバハ砂漠、ディンガ交易所とファラザードを結ぶズムウル峠。ここを縄張りとする獣人たちが隊商を襲い始めたことが物資枯渇のきっかけだった。
 ファラザードの魔王が別の交易ルートを開いたことで危機は去ったが、彼らを野放しにするわけにもいかない。
 かくして副官ナジーンの指揮の元、討伐隊が結成される運びとなった。

 峠に鬨の声が響く。
 数を集め、隊列を組み、果敢に攻撃を仕掛ける。
 だが敵も負けてはいない。麒麟の瞳で兵士たちを見下ろし、その脳天に向かって棍の一撃を振り下ろす。並の兵士では、一発で致命傷となるだろう。
 見たところ、ファラザード軍は軍隊というより民兵に近い。魔王のカリスマの元、一応のまとまりは見せているが統制されてはおらず、個々の練度も高くない。
 一方、相手は数多の隊商を壊滅させてきた獣人一族。苦戦は必至だった。

 私は、といえば、あえて魔法戦士としてでなく、訓練として魔法使いとして参戦していた。
 が、しかし。 「欲張り過ぎた、かな……」

 不得手な職ゆえか、私はあっさりと地を舐める羽目になった。これでは兵士達と大差ない。
 砂混じりの泥が口を汚す。

「ほら、しっかり!」

 僧侶のリルリラに助けられ、なんとか立ち上がるが、これといった策も無い。
 他の仲間が狙われている間にとりあえず魔法を打ち込む。場当たり的な戦いを繰り返すのみだった。

「行けッ!」

 気合と共に杖の先から火球を放つ。炎が麒麟の鱗を焼く。が、焼き尽くすには至らない。獣人は怒りに満ちた瞳で私を睨みつけた。

「くッ……!」

 前衛の攻撃を潜り抜けて突進してくる獣人に、私は一歩下がるのが精いっぱいだった。為す術もなく打ち据えられ、再び地面にキスをする。どうも、かなり甘く見ていたらしい。

 いつの間にか砂嵐が砂漠を覆い、視界は土色の闇に囲まれていた。遠く揺れるかがり火と、蠢く麒麟の首だけが影となって浮き上がる。
 響く悲鳴。討伐隊の苦闘を象徴するように、砂嵐は容赦なく吹き荒れた。
 だがそんな戦いの中で水際だった働きを見せたのは、臨時雇いの傭兵部隊だった。
 しなる鞭が風より鋭い弧を描き、斬撃が鱗を穿つ。さしもの麒麟児も一歩引かざるを得ない。

「思ったよりしんどいな」
「そうか? こんなもんだろ」

 軽口を叩きつつ、傭兵達は手を緩めない。包囲、殲滅。見事な手際だ。

 彼らは流れの冒険者である。今回の戦い、高みを目指す冒険者達の参戦がかなり多い。
 キリンジ一族との戦いは新時代に向けての鍛錬に最適……という噂が流れたためである。
 恐らく、噂の出どころはファラザード当局だろう。兵士だけでは戦力不足と判断し、彼らの力を借りたわけだ。
 ……ま、その噂に欲をかいてろくに準備もせず、不得手な職で参戦した私はこの有様なのだが。
 何事にも準備は必要という訳である。

 冒険者達はさすがにわきまえたもので、流れるような連携戦術を披露していた。
 戦士が手際よく敵の武器を砕き、スーパースターは華麗な鞭裁きで敵を幻惑しつつ極上のスマイルを振りまく。そして旅芸人が投げるブーメランの一撃を合図に一斉攻撃を仕掛ける!
 やがて嵐が弱まり、視界が開けた時、冒険者達は獣人族を追い詰めつつあった。

 私も杖を支えに立ち上がり、辛うじて呪文を詠唱する。業炎が敵の頭上から舞い降り、今度こそ焼き尽くす。
 獣人たちは撤退を開始したようだった。麒麟児来たれり、麒麟児去れり。
 これてひと段落だろう。砂混じりの汗をぬぐう。不意に懐かしい感覚がこみ上げてきた。
 荒野に群がる無数の敵との、緊張感のある連戦……駆け出し時代、チョッピでの連闘を思いだす戦いである。

「こういうのも、たまには悪くないかな」
「私はこりごりだけど~」

 リルリラはぺたんと地面に座り込んでいた。私が同じことをしないのは、単に意地である。
 やがて指揮官のナジーンが作戦成功を高らかに宣言した。兵士たちからは安堵のため息。冒険者達は、余裕のハイタッチだ。
「ご苦労だった。これで運輸状況も改善されることだろう」

 ナジーンが低く、よく通る声で戦士達の労をねぎらう。
 とはいえ、これは魔界の情勢のほんの片隅。
 魔界の雲は何事も無かったかのように流れ続け、緑色の太陽はいつも通りに混沌の光を大地に投げかけていた。
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