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フォースマエストロ

ミラージュ

[ミラージュ]

キャラID
: DX235-898
種 族
: ウェディ
性 別
: 男
職 業
: 魔法戦士
レベル
: 130

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ミラージュの冒険日誌

2020-04-09 00:32:42.0 2020-04-09 01:04:29.0テーマ:その他

再び、魔界へ(2)~なりきり冒険日誌【※ver5.1に関する記述有り】

 ゲルヘナ幻野の南西部、今は亡きネクロデア王国との国境付近に、小さな泉がある。
 宝石のように光を放つ鉱石の周りに色鮮やかな花が咲き、清らかな水が噴水の如くしぶきを上げる。
 足しげく泉を駆けまわる謎の生物が少しだけ気になるが、美しい光景だ。
 私は泉の水に手を触れてみた。ひんやりと透き通った感触が伝わってくる。

「ニャルベルト、飲めそうか?」
「割とイケるニャ」

 猫魔道のニャルベルトは我々に比べれば毒性に強い。杖の先についた水を一舐め。一応リルリラにキアリーの用意をさせておいたが、問題は無さそうだ。
 ふむ、と私は腕を組む。

「ここが少し前まで魔瘴まみれだったとは、信じられんな……」
「本当、魔界のオアシスって感じだよね」

 妖精は噴水の飛沫を浴びて燐光をまき散らした。
 ここはかつて、魔瘴塚と呼ばれていた場所だ。
 堆積した魔瘴石が瘴気を噴き出し、周囲は毒の沼地と化していたらしい。だが見ての通り、今や魔界でも稀に見る美しい湧き水地帯である。

 驚くべきことに、この塚を浄化したのは、まだ若い一人の少女なのだという。
 魔瘴の巫女、と人は呼ぶ。
 魔瘴の噴出が各地で活発化し、魔界三国もその対応に苦慮していたその時、彼女は突如として現れ、ファラザードで、ゼクレスで、そしてゲルヘナで奇跡を起こし、瘴気を鎮めて見せたのだそうだ。
 魔族にとって魔瘴は重要なエネルギー源であると同時に命にかかわる毒でもある。周期的に起こる魔瘴の異常発生は常に魔界全体の悩みの種だった。ゆえに彼らは清らかな土地を求めて争い、時にアストルティアにまで魔の手を伸ばすのだ。

 そんな魔瘴を浄化する巫女は、さしずめ魔界の救世主である。
 これで魔界は救われる……かと思えわれた。
 だが、ここは魔界。血塗られた大地。そうは問屋が卸さなかった。
 巫女の噂が広まるや否や、彼女の「所有権」を巡ってファラザードとバルディスタが睨み合いを始めたのである。
 各地の関所が閉ざされ、旅商人たちはゲルヘナで立ち往生。実質的な戦争状態だ。

「救世主の出現が戦争のきっかけになるとは……つくづく、因果な土地だ」

 私はため息をついた。
 そもそもバルディスタのアストルティア侵攻も、元をたどれば魔瘴の害を逃れるための窮余の一策なのだ。
 巫女がそのまま魔瘴を治めれば、侵攻の理由そのものが消え去ったかもしれない。
 だがアストルティアとの協調路線をとるファラザードは、バルディスタの動きをけん制するため、巫女の身柄を奪い去ってしまった。

「……気に入らないな」

 互いの思惑がすれ違って、無意味な争いを引き起こしたのではないか?
 一度戦いが始まれば、もはや経緯など関係ない。戦ったという事実が、次の戦いの理由になるのだから。
 渦中の巫女は、どんな思いでその経緯を見つめているのか……

「どんな人なんだろうね、巫女さんって」

 リルリラは淡く輝く鉱石を指でなぞりながら言った。

「そうだな……」  宿場町で集めた噂はあいまいなものばかりだったが、一つだけ気になるものがあった。
 浄化の現場を偶然、目撃したというバブルスライムの証言である。
 彼女は特徴的なイバラの腕輪を使い、魔瘴をその身に吸い込んでいたというのだ。
 かき消すでも破壊するでもなく、吸収。
 その話を聞いた時、エルトナ大陸にそびえる二本の大樹が私の脳裏に浮かび上がった。
 一つはツスクルにそびえる世界樹、そしてもう一つは落葉の草原を見下ろす暗黒大樹。
 世界樹は魔瘴をその身に吸い込み、浄化する力を持つ神秘の樹である。
 だがその力にも限りがある。吸い込んだ瘴気が限界を超えた時、世界樹は魔瘴に侵され暗黒大樹へとなり果てる。  巫女の力に、限界は無いのか……?
 私はまだ見ぬ巫女の身体を暗黒のイバラが覆いつくす光景を幻視した。これが私の考えすぎであればよいのだが……
 リルリラは首をかしげながらふらふらと飛んだ後、私の頭に着地した。

「ま、本人に聞いてみるしかないよね」
「重いぞ」

 私は妖精をつまみ上げた。
 しかし彼女の言葉にも一理ある。どの道、ゲルヘナでまごまごしていても埒はあかないのだ。情報収集だって、捗らない。

「ファラザードを目指してみるか」

 関所は閉ざされて通れないが、探せば道はあるものである。こうして、次の目的地が決まった。

「ファラザードにゃ……バザールのみんニャ、無事かニャー」

 猫が空を見上げた。
 街道を駆ける軍馬の足音が、風に乗って届いた。
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