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フォースマエストロ

ミラージュ

[ミラージュ]

キャラID
: DX235-898
種 族
: ウェディ
性 別
: 男
職 業
: 魔法戦士
レベル
: 130

ライブカメラ画像

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ミラージュの冒険日誌

2020-04-18 19:59:36.0 テーマ:その他

邂逅・イバラの巫女(1)~なりきり冒険日誌【※ver5.1に関する記述有り】

 その少女は、水晶のように澄んだ瞳で私を……いや、私の手元を見つめていた。
 噴水から流れる水は花模様にも雪結晶にも見えるタイルの上で波紋を描き、黄金色のランプがきらきらとそれを照らし出す。
 その傍らに佇む少女の姿は、額に飾られた一枚の絵画のように美しく、どこか非現実的だった。

 私の指はわけもなく震え、手にしたものを落としかけた。少女の視線がつられて泳ぐ。
 そして彼女は言った。 

「綺麗な花ね」

 偶像が、絵から足を踏み出した。

 * * *

 私の名はミラージュ。ヴェリナードに仕える魔法戦士である。
 魔界情勢を探る私は、各地の関所が閉ざされる中、ネクロデアの抜け道を通り、砂の都ファラザードへとたどり着いた。予定通りの行程だ。

 だが抜け道の出口が城の地下牢とは思わなかった。
 おかげで我々は警備兵に取り囲まれる羽目になってしまった。ネクロ民め、情報が一つ抜けている。

 我々は以前世話になったバザールの元締め、ジルガモットに連絡を取り、なんとか身の潔白を証明することができた。
 責任者のナジーンが、ズムウル峠のキリンジ討伐に参加した私の顔を覚えていなければ、もっと面倒なことになっていただろう。 「手荒な歓迎ですまなかったが、君たちの行為も軽率だったことは自覚して貰いたい」

 ナジーンは釘を刺しつつ、低くよく通る声で釈放を告げた。
 抜け道を知る為にネクロデア民の頼みごとを聞いて回ったことを話した時点で、彼の態度はかなり軟化していたようである。
 ……我々の身が本当に潔白かどうかはかなり怪しいが、それを正直に告白するほど私がお人好しでない限りは、大丈夫だろう。

 * * *

 釈放された我々は旅商人として用意した物資を割安で街に提供。これは戦時下にある人々に大いに受け入れられた。

「相変らずの仕事ぶりね」

 ジルガモットからの再会の挨拶である。最敬礼にあたる。
 各国の流通が途絶える中、物資輸送で一山当てようとする冒険商人……それが私の選んだ肩書だった。今の魔界では最も動きやすい職業である。
 流通に携わる中で、物資と共に交差する様々な情報を仕入れるのが、第一の目的だ。

 国境付近で睨み合うバルディスタ軍とファラザード軍は、軽い小競り合いの後、膠着状態に陥っているらしい。  交易で栄えるファラザードにとって街道を抑えられた今の状況は面白くはないはずだが、ユシュカ王は余裕の笑顔を崩さない。それは単なる虚勢では……

「……ないらしいわね」

 バザールの元締めがそう判断したからには、何か計算があるのだろう。
 傭兵の募集が盛んにおこなわれ、近々大規模な反攻作戦が行われるのではないかと、街の噂になっている。
 軍部に資材を卸しに出向いた際、我々にもナジーンから声がかかった。ズムウル峠でのかつての働きを、彼は高く評価してくれていたようだ。

「それなりの待遇は用意させてもらうが?」

 私にとっては、難しい申し出だった。独断で戦に介入するわけにはいかない。
 だが情報を得るには、軍部に接近したいことも確かである。ここで背を向けたなら、彼らとの縁は切れるだろう。

 私はアーベルク団長の言葉を反芻した。ヴェリナード上層部が指定した仮想的国はバルディスタ。ファラザードの政策は、親アストルティア。
 中立。なれど天秤は傾けて……
 私は慎重に言葉を選んで答えた。

「商人である私にとってはバルディスタも商売相手。剣を振るうわけにはいきません。が、この国の方々には恩も縁もある」

 私は荷駄に手をかけ、バザールを親指で指した。

「……銃後を支えるだけのことは、させていただきましょう」

 綱渡りの選択だった。
 ナジーンはこれを了承し、私はいち商人として物資供給に手を貸す形でファラザードを支援することとなった。
 つまるところ今までと同じなのだが、副官公認という肩書を得られたのは大きい。必要とあらば王宮内に立ち入る許可も下りる。
 あからさまに詮索することはできなくても、兵士たちの雑談や侍女達の世間話に加わるだけで、情報の幅は広がるものだ。
 どうやらユシュカ王は何かを待っている、らしい。

「鐘が鳴るまで、じっと待つのさ。慌てると貰いが少なくなるぞ」

 王は笑う。
 私もまた地道に業務を遂行し続けた。どちらの? 無論、両方である。
 ……そして、その日が訪れた。

 * * *

 その日、私は物資納品のために登城していた。品目は食料、各種の布、それに観葉植物。
 私がたまたま異国の花を手にしていなければ、この出会いは無かったかもしれなかった。

「綺麗な花ね」

 彼女はゆっくりと階段を下り、私に微笑みかけた。
 無造作に差し出した白い腕には、イバラの腕輪が巻き付いていた。
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