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フォースマエストロ

ミラージュ

[ミラージュ]

キャラID
: DX235-898
種 族
: ウェディ
性 別
: 男
職 業
: 魔法戦士
レベル
: 130

ライブカメラ画像

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ミラージュの冒険日誌

2020-04-18 20:00:01.0 テーマ:その他

邂逅・イバラの巫女(2)~なりきり冒険日誌【※ver5.1に関する記述有り】

 棘のない顔をしている。
 それが彼女の第一印象だった。
 柔らかな銀髪、丸みを帯びた穏やかな瞳。飾り気のない質素なドレスに、たおやかな細腕。
 だからこそ余計に、その腕に巻き付いたイバラの腕輪が際立って見えた。

「こんにちは」

 彼女は私に微笑みかけた。毒のない笑顔だ。
 私は帽子を外し、そのまま一礼した。 「お初にお目にかかります。巫女殿」

 少女は少し困ったような顔でお辞儀を返した。

 魔瘴の巫女。彼女はそう呼ばれる人物である。
 魔瘴調伏の旅の中でファラザード軍に拉致されたとのことだが、客分として扱われ、まるで姫君の様な暮らしをしている……というのがバザールで聞いた噂だ。
 どうやら、当たらずとも遠からず、らしい。

 互いに挨拶をかわし、自己紹介をすます。だが彼女は私の名前よりは、この花の名前が気になるようだ。
 青白く澄んだ花びらは、砂の都にあって一層涼しげに揺れていた。

「何という花なの?」

 無邪気とも思える瞳で彼女はそれを覗き込んだ。銀髪が無造作に揺れる。
 彼女こそ、触れれば朽ちてしまう花ではないのか? 奇妙なざわつきが胸に爪を立ててかき乱す。未知の宝石を目にした少年のような気分だった。
 だが一方で、狡猾な大人の本能は怜悧に状況を判断していた。
 私は魔瘴の巫女との接触を果たしたのだ。聞き出せるだけの情報を聞き出さねばならない。しかも、できるだけ自然に。
 私は余裕ある笑顔を繕うと、花を背中に隠した。

「私は商人。取引と行きませんか」
「取引……?」
「花の名前を教える代わりに、お聞きしたい」

 彼女は少し戸惑う顔を見せたが、私は構わず続けた。

「巫女殿は魔界中で魔瘴を祓ってきた……大変な御業です」

 少女の目元が僅かに硬直する。私はその瞳を凝視した。

「大きな力には大きな代償がつきもの……お体に相当な負担があるのでは?」

 彼女は反射的に腕のイバラを一瞥した。
 果たして"魔瘴の巫女"は瘴気鎮静に向けて、切り札たり得るのか。私はそれを知らねばならない。

「……もしお疲れなら、滋養強壮の薬草も搬入させますよ。ああ、ご心配なく。お代はユシュカ王からガッツリと頂きますから」

 冗談めかせて言うと、少女はクスクスと笑った。抜け目ない商人の顔で本当の意図を隠す。私は汚い大人かもしれない。
 少女は細腕を撫でながら言った。

「……確かに魔瘴を鎮める時は少しきついけど、すぐ治まるわ。大丈夫よ」

 逆に言えば、負担はある、というわけだ。
 巫女は私を安心させるように、微笑みを浮かべて頷く。
 不意に、もう一つの……任務外の疑問が私の脳裏に浮かび上がった。
 しばしの逡巡ののち、わたしは口を開いた。

「無礼を承知でお聞きします」

 彼女は首をかしげた。私は続けた。

「貴女は人間族に見えます」

 少女がハッと息をのむ。

「……にも関わらず、この魔界で魔瘴を鎮めて回っている。人間のあなたが魔族の為に奔走することに、疑問はないのですか?」

 噴水の音が、やけに鮮明に響いた。
 透明なものが、幾何学模様の上を流れていった。  少女はゆっくりと唇を動かした。

「人間……アストルティアという世界に住んでる人たちのことね」

 少女の瞳は一瞬、遠くを見つめ、そして彼女は自分の胸に掌を押し当てた。

「私が人間かどうか、わからないわ……私は何も覚えてないの」
「記憶が……?」

 彼女は頷く。

「ただ私が目覚めた時、目の前にあったのがこの世界で……周りにいたのが彼らだったわ。それを守ろうと思うのは、おかしいかしら?」
「……自然な感情かと」

 私は驚きを押し殺して答えた。一体彼女は何者なのだ?

「それに、魔仙卿は言ってたわ。次の大魔瘴期はアストルティアまで飲み込む巨大なものだって」
「なんですって!?」

 押し殺した衝撃があっさりと溢れた。耳ヒレがみっともなく震えだす。

「それは……い、いや、まず……」

 私は動揺を空気と共に飲み込んだ。

「……巫女殿は魔仙卿の部下なのですか?」
「恩はあるし、頼み事も受けたわ。でも、部下ではないと思う」
「そ、そうですか……」

 意外なことではあるが、予測できなかったことではない。それはいい。
 衝撃の本陣に私は切り込んだ。

「それで、魔瘴がアストルティアをも巻き込むというのは……事実なのですか?」
「私にはわからないわ。でもあの人は多分、ほんとうのことだけを言う人よ」

 私は沈黙した。
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