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フォースマエストロ

ミラージュ

[ミラージュ]

キャラID
: DX235-898
種 族
: ウェディ
性 別
: 男
職 業
: 魔法戦士
レベル
: 130

ライブカメラ画像

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ミラージュの冒険日誌

2020-04-29 18:00:32.0 2020-04-29 18:13:27.0テーマ:その他

王の再起(4)~なりきり冒険日誌【※ver5.1に関する記述有り】

 その日、ユシュカは誰にも会わなかった。
 見回りの兵たちも、誰に頼まれたのか、その日だけは王の部屋に近づかなかった。
 月の光は、ゲルヘナに輝く大光球の輝きと混ざり合い、複雑な色合いで砂漠の夜を照らした。
 冷たく乾いた風が、扉の隙間を抜けて宮殿に入り込む。
 夜のしじまが熱砂を冷まし、透徹とした空気が逃れようもなく全てを包んでいく。  やがて……雲が空を覆った。ファラザードの街を、月明かりから遠ざけるように、抱き包むように。
 寝ぼけ眼で空を見つめた私は、その雲に何故かイルーシャの面影を見ていた。
 ユシュカ王には、よりはっきりと見えたのではないか。
 慈母の抱擁……宵闇が眠りをもたらし、沈黙が街を覆う。
 安らぎ……。

 そして、夜が明けた。

 砂漠の宮殿を曙光が照らす。
 幾重にも絡まった混沌の陽光がファラザードの砂に再び熱を与え、旋風がそれを巻き上げた。砂塵が木の葉を打ち鳴らし、オアシスの水面がきらきらと音を上げた。
 樹々の影が、バルコニーに大きく伸びる。
 街が目を覚ました。
 そして彼は、そこにいた。

 燃えるような赤髪をなびかせ、空を見上げていた。
 カナリア色の瞳に宿った光は、才気ばしった俊英のそれとも、打ちひしがれた敗者のそれとも違う。
 憂いがある。陰りがある。だが曇りは無い。  傍らには、イバラの腕輪を身に着けた巫女の姿があった。
 彼はイルーシャと目を合わせ、何も言わずに頷くと、身を乗り出して街を見下ろした。
 兵士が、民衆が、彼の姿に気づき集まり始めた。
 ユシュカはその全てを均等に見渡し、己の掌を見つめ、拳を握りしめた。

「心配をかけてすまない」

 よく通る、堂々とした声だ。通りすがりの誰かに素通りすることを許さない、王者の声だ。

「先の戦いの敗北、払った犠牲、全ては俺の甘さが招いたことだ。だがこんな俺にまだついてきてくれるなら……」

 彼は拳を己の胸に叩きつける。

「……俺は全てをもってそれに応えよう!」

 かつての彼ならば自信にあふれた笑みと共に、爽やかにこの言葉を発しただろう。
 だが今は違う。
 より重く、より強い。
 瞳に輝くのは自負を超えた覚悟の光だ。彼は王として、そこに立っている。
 歓声が巻き起こる。王の再起を讃える声が。

 夢の続き、見なくちゃな……。ハジャラハの声が蘇った。
 これで王は一生、夢の中だ。私は胸の内で呟いた。
 覚めることの許されない夢……それが呪いとなるかどうかは彼次第、か。

「ファラザードの王は、これよりゼクレスに向けて出撃する!」

 地鳴りのような歓声に熱砂が轟く。
 王は颯爽とバルコニーを飛び降りた。
 兵士の一人が軍馬を引き渡すと、彼はそれに飛び乗り、街道へ向けて一直線にバザールを駆けぬけた。
 兵士たちが慌ててそれを追う。民兵、傭兵もそれに続く。隊列も何もない。ただ熱を帯びた風が砂漠を駆けぬけていく。

「ファラザードが蘇ったわね」

 ジルガモットはそう言った。
 王は背後を振り返り、速度を調整しながらその熱を先導する。熱を殺さず、走りながら隊列を整えていくつもりだろう。彼はそれができる男だ。
 
「止まっちゃいけねえのさ」

 いつの間にか、ハジャラハもその隣に立っていた。
 そして、イルーシャは歓喜に沸く群衆の壁を潜り抜けて私の元に走り寄ってきた。
 驚く私を尻目に、彼女は単刀直入に用件を切り出した。

「取引をしてほしいの」
「私に?」
「ええ」

 彼女は深刻な表情で私の顔を見上げた。

「私に雇われて」

 私は数度、まばたきした。
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