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フォースマエストロ

ミラージュ

[ミラージュ]

キャラID
: DX235-898
種 族
: ウェディ
性 別
: 男
職 業
: 魔法戦士
レベル
: 130

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ミラージュの冒険日誌

2020-06-15 22:08:48.0 2020-06-17 11:49:06.0テーマ:その他

ガタラ防衛戦線異状なし(1)~なりきり冒険日誌

 卓上の鉱石ランプが、酒瓶を鈍く照らした。
 肘をつくとガラスの中の液体が微かに波打つ。
 やがて私の待ち人が現れ隣に腰掛けると、その波はさらに大きくなった。

 ここは岳都ガタラの、ちょいと洒落た酒場の一角。レンガ造りの壁に影が二つ並ぶ。
 女は無言のまま、不機嫌そうに腕組みしてそっぽを向いた。仕方なく、私は自分から口を開かねばならなかった。
 軽く咳払い。窓を見つめる女の横顔に私は声をかけた。

「初めまして……とは言いたくないが?」
「知らないね」

 女……盗賊ギルドのダルル団長は薄く開いた眼で私を一瞥した。

「魔法戦士団のミラージュなんて名前は、さ……」
 * * *

 私の名はミラージュ。ヴェリナードに仕える魔法戦士だ。……ダルルの視線が痛いが、そう自己紹介せざるを得ない。

 魔界探索の任務をひとまず終え、しばしの休暇から復帰した私の次なる任務は、アストルティア防衛軍の支援だった。
 ユナティ副団長……もとい交換員Y氏によれば、近頃、ガタラ原野に怪しい動きがあるらしいのだ。
 遠からず、岳都ガタラが魔物軍団の標的となる。そう判断したメルー公……総帥Mは、ドルワーム王国を通じてガタラに防衛軍スタッフを送り込んだ。防衛設備の設置、住民の避難経路確保など、現地の自治体と協力して防衛体制を整えるのが防衛作戦の第一歩である。
 だが送り込まれたスタッフは、この第一歩でいきなりつまずいた。
 別段、彼らの能力に問題があったわけではない。ただ、彼らは知らなかったのだ。
 一体、誰に協力を仰げばよいのか、を。
 岳都ガタラは無政府主義の町である。評判の悪かった先の町長が病に倒れた時、人々は新たな支配者を求めなかった。
 つまり、話を通すべき代表者が存在しないのである。

「お偉方が頭を抱えていたよ」

 ダルルに肩をすくめて見せるも、女盗賊はそっぽを向いたまま鼻を鳴らしただけだった。
 支配者不在の町。自由の都といえば聞こえは良いが、そんなものが成り立つのか? 学者先生も首を傾げたものだ。
 ……無論、カラクリはある。

 料理を運んできたウェイターが、恭しくダルルに一礼した。ダルルが軽く視線を向けると、恐縮したように肩をすぼめる。彼の態度は、単なる客に対するそれではなかった。
 瞳には敬意と、若干の畏れがある。こう言うとダルルは怒るだろうが……それは一介の兵士が、王や貴族に向ける視線によく似ていた。
 この店は、いやこの付近一帯はダルル盗賊団のナワバリなのだ。

 盗賊ギルドは単なる盗人たちの巣窟ではない。
 上納金と引き換えに商店の運営を守り、住民の悩み事を解決し、不義理があれば即座に強面を派遣する。その中核にあるのは、いわゆる侠の精神だ。
 人の上に立つ統治者など、ガタラには存在しない。岳都を守る者たちは、地下深くにその根を張り巡らせたのである。

 ギルドはいくつか存在し、多少の軋轢を抱えながらもガタラを分割統治している。ギルドの長はいわば、地方領主と言っていい。
 つまり私はガタラの地方領主に謁見する外交官として、この都に派遣されてきたのである。

「適任、ということでな。つまり、君らとは……」

 目を合わせようとしないダルルに、私はため息交じりに言った。

「……面識がある」

 ダルルがつまみのナッツを噛み潰した。
 刺々しい空気が私の耳ヒレに突き刺さった。
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