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フォースマエストロ

ミラージュ

[ミラージュ]

キャラID
: DX235-898
種 族
: ウェディ
性 別
: 男
職 業
: 魔法戦士
レベル
: 130

ライブカメラ画像

2D動画 静止画
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ミラージュの冒険日誌

2022-01-30 16:07:06.0 2022-01-30 16:25:20.0テーマ:その他

海賊と冬の陽炎(14)~なりきり冒険日誌【※海賊クエストに関するネタバレあり】

 戦いが終わり、地下空洞に渦巻いていた熱が霧と消える。
 一人の男を支配していた熱情もまた、急速に冷めていった。
 事情を説明されたゲーダムはあんぐりと口を開け、呆けたように船長の顔を見上げていた。

「ピードが……?」

 ……そう、あのピードだ。海戦で傷を負い、マドロック海賊団に保護され、そして今や彼らの一員となった男。
 信じがたい偶然だが……ピードその人が宝の地図を片手に地下空洞へと到着すれば、ゲーダムと言えど信じるしかなかった。
 弟との再会。急展開。

「弟の命の恩人を殺すところだったとは……」

 やがて彼は海賊たちに向き直り、こうべを垂れた。

「すまない。私が間違っていた」

 ……嗚呼、めでたしめでたし。
 これにて一件落着。全て解決。
 壁に描かれた、白々しいほど鮮やかな空のもと……
 地下空洞が和やかな空気で満たされた。

 ……だが。

 一人だけ、その空気を許さない男がいた。
 その男は、背後からゲーダムに近づき、声をかけた。

「ゲーダム」

 そして私は、振り返ったゲーダムに、拳を叩きつけた。

「……ふざけるな!」  鈍い音がしてゲーダムが膝から崩れ落ちた。

 * * *

 マドロック船長がギョッとした表情で私を振り返った。構わない。私はゲーダムの胸ぐらをつかみ、乱暴に引き寄せた。
 ゲーダムの顔が痛みと困惑に歪む。それ以上に、私の口元は怒りに歪んでいた。
 何か凶暴な怒りが、私の体を支配していた。

「お前の弟が偶然生きていた。だから自分は間違っていた、だと!?」

 拳が震える。

「……ならば弟が死んでいたなら、間違いではなかったというのか?」

 肺に渦巻いた荒い空気が、吐息となって溢れ漏れた。目が吊り上がっていくのを、私は止められなかった。

「弟さえ死んでいれば、自分に非は無かったと……魔法戦士が法を犯し、感情のままに殺戮に走っても間違いではなかったと、そう抜かすつもりか!」

 ゲーダムは一瞬、何を言われたのか分からないという顔になった。それがなお私を苛立たせた。
 私は掴んだ胸倉を、突き飛ばすように放した。ゲーダムが倒れこむ。ピードが駆け寄るのを私は遮り、怒気を孕んだ声を叩きつける。

「次の流れ弾では、今度こそお前の身内が死ぬかもな! その時お前はまたぞろ恨みを燃やし、海賊殺しを再開するわけだ!」

 ゲーダムは瞳に戸惑いを浮かべる。私は吐き捨てるように言った。

「貴様が言ったのは、そういうことだ」

 そしてまくしたてた。自分でも止められなくなっていた。

「結局、貴様は自分の非を認めたわけではなく、ただ自分の受けたダメージが思ったより少なかったから相手を許してやったにすぎん! 己の罪を理解せず、悔いることもせず、ただ弟が生きていたから暴れるのをやめた」

 それを改心とは呼ばない。少なくとも、私は呼ばない。

「それで一件落着にされて、たまるものか!」

 私の声が地下空洞に響いた。幾重にも。エコー。
 反響して耳に届いた自分の声は、怒りに歪んでいた。
 なんという、嫌な声だろう。
 冷たいトゲが己自身を突き刺す。一瞬の眩暈。

「ミラージュ」

 と、ゲーダムと私の間に割って入る影があった。
 リルリラ。
 エルフは静かに首を振って私を見上げた。

「もうやめなさい」

 エルフの瞳は、どんな静寂の呪文より強く、私の声を封じ込めた。

 気まずい沈黙が、湿った空気をかき乱した。リルリラが私の顔を覗き込む。私は……帽子を目深にかぶり、目元を隠した。  怒りと同じだけの自己嫌悪が襲い掛かる。激情を抑えられなかったのは、私も同じだった。
 背を向ける。リルリラの手が私の背ビレに触れた。
 ゲーダムも、私と同じように地面を見つめていた。天井から水滴の落ちる音が、やけにはっきりと聞こえた。
 その音が聞こえなくなったころ、私は再び口を開いた。今度はゆっくりと。

「……お前がハルバルド海賊団を追っていた時……」

 ゲーダムが静かに顔を上げた。

「……海賊に対する嫌悪は隠そうともしなかったが……それでも任務に私情は挟まなかった。必死で怒りを抑え、任務外で力を振るうことはしなかった。だから私は……」

 胸から、深い息が溢れた。

「……お前を尊敬できると思っていたよ」

 ゲーダムの指がピクリと揺れた。私は目を合わせないまま首を振った。

「残念だ」

 重苦しい空気の中、やがてゲーダムはぽつりと呟くようにこう言った。

「……罪を償おう」
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