今回の私は大好きなブラジルの作曲家エグベルト・ジスモンチを紹介しました。
相当音楽好きの人しか知らないと思いますが、ピアノとギターの達人でもある世界最高クラスのレジェンド音楽家です。
アストル・ピアソラと同様にナディア・ブーランジェ女史の指導を受けて己のルーツを見つめ直しジャングルに1年間籠ったエピソードなど破天荒なキャラクターでも知られていますw
来日公演の際にはあの葉加瀬太郎が勉強のために自腹で観に行ったという話もどこかで聞きました。
このブラジルの巨匠を私が知ったきっかけはNHKで特集している番組を観たことです。
美しいメロディと先の読めないスリリングな展開に私は夢中になり即CDを注文しました。
ECMというかなりのジャズ・クラシックオタクのみを対象にしたレーベルですw
NHKの番組で解説していたギタリストの鈴木大介氏はジスモンチの音楽を
「洗練された野性」と評しています。
ジャングル生活で培った野生動物的な荒々しさを高度な技術で制御する。
ジーコを中心とした黄金の4人によるサッカーブラジル代表が最も面白いプレーをしていた時は
「バグンサ・オルガニザータ」(混沌と秩序)
と呼ばれるスタイルでしたが、ジスモンチの音楽もそれと同様にスペクタクルなものです。
1 7つの指輪
この曲はNHKの番組にジスモンチが出演した時
「子供の頃、近所のお姉さんに優しくしてもらった事を思い出して作曲した」
と嬉しそうに語っていました。
誰にでも年上の異性に憧れる時期はあり、共感しやすいテーマだと思います。
1分45秒あたりで曲の展開が変わり、チクタクと時計の針のような音を奏で始めて、懐かしい記憶の扉を開きます。
このタイムリープのような音楽描写は原曲だとかなり長く5分ぐらいかかりますが、この動画の演奏では1分ちょっとに短縮されています。
時間の旅を終えて最後は記憶の中にある優しいお姉さんの思い出と共に曲が終了します。
それにしてもジスモンチの演奏は癖が凄いですね。
ミスタッチ?何それ美味しいのとでも言わんばかりの勢いでブレーキを踏まずに突っ走りますw
2 レシフェ
私が買ったのは美しい青空が描かれたこのジャケットのCDです。
レシフェというのはブラジルのベネチアとも言われる大西洋に面した水の都です。
2014年に開催されたサッカーワールドカップで日本はこの地で初戦を戦いました。
本田圭佑の豪快なゴールで先制しながら、コートジボワールの英雄ドログバ投入で流れが変わり逆転負け。サッカーファンにとっては苦い記憶がある場所です。
曲に話を戻すと出だしは心地よい昼下がりを思わせる優雅な感じですが、次第に雲行きが怪しくなってきます。
急な夕立でしょうか?ピアノは勢いを増して3分過ぎぐらいでクライマックスを迎えます。
4分35秒ぐらいにもう一度やってくるこの曲のサビは私の勝手なイメージですが、往年のクイズ番組アタック25をなぜか連想しますw
児玉清 「その都市名とは!?」
解答者 「レシフェ」
児玉清 「その通り!」
3 カラテ
この曲は2分40秒過ぎまでピアノを弾かないので延長会に回そうか迷いましたが、最後は盛り上がる曲で終わりたかったのでイベント内に強引にねじ込みました。
曲の始まりから押し寄せる猛烈な音の洪水。
手を変え品を変え、様々な楽器による超絶テクニックの連続で聴く人の耳を飽きさせません。
しかしタイトルが「カラテ」って謎過ぎますね(笑)ブラジル人の空手のイメージはこれでしょうか?
私としては「ケイバ」の方が全然しっくりきます。
G1レースの最後の直線の叩き合いをこの曲は容易に連想できます。
ハチャメチャな音楽のようでいてなぜか聴きやすい。これがまさに冒頭で私が語った「洗練された野性」というものです。
これからの時代はますます科学技術も進歩して超管理社会になる事が予想されますが、ロボットのような人間にならないようにジスモンチの音楽を聴いて野生の本能を取り戻していきましょう!
4 ロロ
エグベルト・ジスモンチ自演によるピアノソロアルバム『Alma』からの選曲です。
Almaとはポルトガル語で魂を意味します。
ジスモンチの演奏はお世辞にも正確とは言えないものですが、そんなのは些細な事です。
私個人としてもヨーロッパを中心としたコンクール仕様のピアノ演奏だけが上質ではないと思います。
動画で孤高の天才音楽家の魂を感じて欲しいです。
この曲はジスモンチ自身に長男が生まれた頃に作られた、天使の歌声のような祝福に満ちた音楽です。
最後は赤ちゃんが電池切れで眠りにつくように穏やかに終了します。
今回はピアノソロ版にしましたが5分25秒の原曲では、より天使の歌声感があって良いのでぜひそちらもお聴きください。