気が付けば、金策といえば竜牙石金策となるまでに私は竜牙石金策をし続けていた。
強さを求めてお金をつぎ込むわけでもなく、ドレアやハウジングなどをするわけでもなく。私はひたすらにお金を貯めていた。
なぜお金を貯めているだけなのか、なぜお金を使わないのか。自分でもよくわからないが、多分私は竜牙石金策が大好きなのだろう。
そうして今日も私はドラクロン山地へ赴いている。
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消えかけた炎のような夕焼けを眺めながら、私は現在のターゲットであるヘルジュラシックを狩る。
ここ数年ずっと狩り続けているドラクロン山地のドラゴン達。
同じ作業をし続けている私は、機械のようにヘルジュラシックを狩り続けた。
そうして彼らを無機質に狩っていると、気が付けば辺りは常闇と化していた。
早く帰らねば、そう思っていたそのとき。
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「ぐっ…………助け……て……」
その声の持ち主はベヒードスに襲われている少女だった。
ベヒードスは経験値が少ない割に強く、誰も戦わないだろう魔物だ。
おそらく近くを通り過ぎたときにでもベヒードスに追いかけられ、戦闘になったのだろう。
瀕死の少女を助けるため、私は戦闘に乱入する。
「大丈夫!? 今助けるよっ!」
「ありがっ……あなたは……!? まさか……私と同じ波動……っ!? どうかこれ……を」
そう言って気を失った少女が、最後に渡してきたものはまるで炎のような形の剣と盾だった。
その装備を受け取った瞬間、まるで誰かに記憶を書き換えられたように操作方法が頭に入ってくる。
私はそうして急に入ってきた情報を整理しながら、そのデバイスを起動する。
気付けば、私は盾の水晶のように輝いている銀色の丸いスイッチをポンッと叩いていた。
Now Lowding……
盾から変な音が鳴っていることを気にするより先に、私はこの力を早く使ってみたいとうずうずしていた。まるで自分ではない何かが、獲物を求めるように。
そして私が掲げたその盾から、魔力の壁が現れ、私を覆っていく。
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「変身!」
GAME START!
change! MERA mode!
変身の掛け声とともに、私を魔力で形成された鎧が覆っていく。
体から湧き上がる炎の力。試さずにはいられない。
私はベヒードスをまるで新しいおもちゃを買ってもらった子供のように眺める。
ぴりぴりとした適度な緊張感が、私を楽しませる。
体を突き刺すように冷たい夜風と、私の燃え盛る炎が、入り乱れる。
「私の力、初披露といこうか!」
目の前にいるベヒードスを炎を模した剣で斬りつける。
ジュッっと、ベヒードスから焼肉でもしているような音がする。唸り声を上げ、私を醜悪な眼で睨みつけてくるベヒードス。
そうだ。こんな感じだ。私が求めていたものは。
レベルアップで手に入る力、武具で手に入る力、スキルで手に入る力。そのどれも私は好きになれなかった。
理想の力を追い求めていったが、結局見つからなかった。いつの間にか、私はその力を追い求めることを諦めてしまっていた。
しかし今。私の手の中にあるのはまさにその力。
再燃した炎は、止まることなく獲物を求めるだろう。ちょうどいいところに、敵という名の獲物が私の目の前に立ちはだかっている。
……絶好の機会だ。
憎悪に身を任せ、斬りつけられ怒ったベヒードスはその巨大な爪を私に振り下ろしてくる。
私は魔法で剣に炎を纏わせ、その攻撃を剣で受けとめる。さすがはベヒートスといったところか、剣には重みがありありと感じられていた。
炎を纏った剣で受け止められ、爪を火傷したベヒードスはさらに私を睨んでくる。
「うっ……。よっと!」
しかし、火傷して弱っていたのか、私に力比べで負けたベヒードスはよろけ、後ろに飛ばされる。
そして、私はその隙を見逃さない。
Ready go……Here we go……Let's go……
獲物を次で必ず仕留めると言わんばかりの佇まいで、変身したときと同じように盾を叩いた私は構える。
「いっけえええええええ!」
もう一度盾を掲げ、魔力を補填する。実感できるほど身体のそこから、力が湧き上がってくる。
力がみなぎった身体は、やつを倒せと疼く。
私はベヒードスの不細工なその腹のちょうど真ん中あたりの高さまで飛び上がる。
Punishment Finish!
ベヒードスは力を失い、膝から倒れていく。
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私が放った会心のムーンサルト、その軌跡が、ベヒードスのはらわたをを抉ったからである。
「このまま電源をお切りくださいっ!」
私がその言葉を放った瞬間。ベヒートスは討伐され、やつとの短いようで長い戦闘は幕を閉じた。