アストルティアのとある場所。
ゴウキ「待て」
がんだい「・・っ!」
ふいに呼び止められる俺。
背後にはただならぬ気配を感じた。
この声・・この威圧感・・ヤツだ。
ゴウキ「久しいな」
がんだい「・・まさかお前が来るとはな」
コイツの名はゴウキ。
とあるヤベー格闘家の名前を名付けられた、油断ならないスライムだ。
ゴウキ「我がこうしてうぬの前に姿を見せるのは幾日ぶりか・・」
がんだい「・・ああ」
ただいま絶賛育成中の新規仲間モンスターと違い、コイツは既に12回の転生を繰り返し、魔界モンスターに引けをとらない強さを身につけている。
俺の仲間モンスターの中でも最古参と言えるヤツだ。
ゴウキ「どうやら最近、うぬに取り入って強さを求める輩が増えたようだが・・」
がんだい「ああ、確かにそんな仲間が増えたな」
ゴウキ「愚かな事よ・・」
がんだい「動機はどうあれ、強くなる事は悪い事じゃない。向上心までは否定できないさ」
コイツだって最初は全く強さを感じないスライムだった。
だが本当に、「いつの間にか」これほどの強さを手に入れていた。
まるで強くなるのが当然だと言わんばかりに。
ゴウキ「強さとは・・求めるものではない」
がんだい「ならどういうものなんだ?」
ゴウキ「強さとは、掴むものよ」
がんだい「ぬ・・」
ゴウキ「自ら強さを欲しても、行き着く先は望んだだけのモノしか得られん。だが望んだ以上の強さを得るには、自らの手で掴まねばならぬ」
全てを見透かしたように話すゴウキ。
ならばコイツは何を掴んだと言うのか。
ゴウキ「強さとは・・欲でも、力でも、心でもない。全てを超越し、全てを破壊した先に見えるもの」
がんだい「お前は、それを持っているというのか」
ゴウキ「少なくとも、我はうぬに強さを望んだ事は無い。・・強さが欲しいからとて他のモノにそれをねだるなど、笑止」
確かに・・コイツは強い。
そして今の俺の仲間とは違った強さを持っているのも事実だ。
ゴウキ「我はうぬにも言っておる。ただ与えるだけで、それが正解だとはゆめゆめ思わぬ事だ」
がんだい「何・・」
ゴウキ「うぬは彼奴らの主ではあるが、それ故にそれに見合う振る舞いをせよ・・」
がんだい「振る舞い・・」
ゴウキ「・・うぬがいつまでも今の強さにあぐらをかくままであれば、彼奴らとてうぬをそこまでのモノだと見限ると言う事よ」
俺はハッとした。
確かに最近は今の状態で満足している感があったからだ。
ゴウキ「失望させてくれるなよ・・」
そう言って姿を消したヤツの言葉を反芻した俺は、改めて気を引き締めるのだった。
がんだい「俺自身・・強さを更に掴まねば・・か」
その先に何があるのか・・俺にはまだ解らんが、な。