アストルティアのとある場所。
ケン「よう」
がんだい「ああ・・お前か・・」
ケン「どーしたんだ?シケたツラして。お前らしくねーな」
少し軽いノリで話しかけてくるコイツの名はケン。
アメリカ出身の、主人公のライバルキャラのような格闘家の名前を冠した俺の仲間モンスターの1人だ。
がんだい「実はちょっと考えててな・・この世界に流れる音楽の事だ」
ケン「音楽?あー、すぎやま先生という方だっけ」
がんだい「ああ・・」
話の内容としてはメタな話ではあるが、どうせ聞いてるのはコイツくらいだ。
多少突っ込んだ話をしても構わんだろう。
がんだい「実はとある記事を読んでな。このドラクエ10に流れる音楽を作る作曲家に新しい人を呼ぶべきだ・・という提案が上がってたんだ」
ケン「ふーん、でもまあ仕方ないんじゃねえの?いくらこの先生が色んな作品に曲を作ってきたとしても、それが永遠って訳にはいかねえしよ」
がんだい「・・それは解る・・解るんだが、その提案の賛成意見っていうのがかなり多かったのが・・結構ショックでな」
ケン「・・ふむ」
がんだい「俺は確かに音源大好きで、すぎやま先生に限らず、色んな作品の劇中歌やBGMを作る作曲家の先生方にはいつも尊敬の念を抱いている」
そう・・そこにはあるのだ、過去から連綿と受け継がれてきた様式美というヤツが。
この作品にはこの人の曲じゃなきゃダメだというような・・
この場面にはこういう曲が相応しい・・というような。
がんだい「確かにこのドラクエ10には、過去の作品で流れた音源が流用されていて、それが代わり映えが無いという意見があって、新しい作曲家を求めるという意見があるのも解る。だけど、俺ははっきり言ってそれが嫌とは思わない。むしろ過去の作品の音楽を流すのをこの上なく嬉しく思ってるんだ」
ケン「なるほどな、いくら代わり映えの無いものとは言え、それを怠慢と捉えるか、美徳と捉えるか・・という事だな」
がんだい「ああ・・俺は古臭い人間だからな。とあるボス戦でドラクエ5のボス戦の音楽が流れた時は狂喜乱舞したし、色んな世界のフィールド音楽が過去の作品のフィールド音楽を流用してた時なんか懐かしくて少し涙が出たくらいだ」
ケン「まあ・・お前の言ってる事も解るよ。単純にこれまでのシリーズ作品の音楽を流用してるからって、それの何が悪いんだ・・と、言いたいんだろう?」
がんだい「ああ・・」
ケン「だがそれと同じくらい、新しいモノを求めたいという連中がいるのも・・解るよな?」
がんだい「・・ああ」
ケン「お前はさ、怖いんだよ。新しいモノを認めるという事が」
・・俺が・・怖がってる・・?
ケン「確かにこれまでお前が見てきたモノ、感じてきたモノというのは尊いモノだと思う。だからっていつまでもそれにしがみついていちゃ、先に進めねえだろ」
がんだい「それは・・解っている・・でも、過去を大事にしたいってのは間違ってるっていうのか?」
ケン「いや、間違ってないさ」
がんだい「だったら・・」
ケン「間違っていない・・だがいくら過去のモノがいいからって、新しく作られるモノを否定することが間違ってるというんだ」
がんだい「・・・・」
ケン「認めてみろ、多様性ってヤツをよ」
がんだい「俺は・・」
ケン「お前ならできるさ。だってお前は俺達のようなモンスターだって仲間として受け入れてくれただろう?」
がんだい「あ・・」
ケン「そんなお前が、自分が知らないってだけで新しいモノを受け入れないのは・・違うよな?」
・・新しいモノを認める・・か。
ケン「ま、色々考えてみるこった・・んじゃーな。また冒険に連れてってくれよ」
そうしてケンは去っていった。
確かに俺は、もう少し広い目で見るべきなのかもしれんな。
今は納得いかなくても、そのうちきっと・・