アストルティアのとある場所。
がんだい「ん?」
マッドマン「・・・」
気がつくと、後ろに俺の仲間モンスターがついてきていた。
がんだい「お前か。何か用か?」
マッドマン「・・・」
コイツの名はマッドマン、とある世界の英雄たちをモチーフにした格闘ゲームに出てくる奇怪な原住民のような格好をしたキャラの名前を冠した、俺の仲間モンスターの1人である。
がんだい「相変わらずお前も無口だなあ、ホンダといい勝負だ」
マッドマン「・・」
・・だがホンダと違ってコイツの場合、本当に表情が読めない。
何を考えているのか解らない。
がんだい「お前も鍛えてほしい口か?」
マッドマン「・・」
相変わらず何の反応も無い・・だがついてくる気配はありそうだ。
がんだい「解った解った、じゃあこれからはお前も並行して鍛えていくよ」
マッドマン「・・」
やはり解らんが、問題は無いらしい。
がんだい「さて・・な」
何だか少し怪しい気配は感じつつも、これまで通りコイツも鍛えていくとするか。
・・・・・・・
マッドマン「(クカカ・・どうやらコイツについていきゃ強くなれるってのは本当らしいな・・)」
がんだいがマッドマンを訝しげに思っている間、彼はこんな事を考えていた。
マッドマン「(俺のいた所にコイツが現れた時、コイツは仲間に魔物を引き連れていた。そいつが他の連中と戦っている姿を見た時に確信したぜぇ・・コイツの仲間になった魔物は特別な力を得ているって事になぁ)」
彼は、そのときに感じた直感を思い出す。
マッドマン「(何とかして俺もその力を得たいと思っていた時に、ヤツが魔物の仲間を集めていると知り、チャンスだと思ったぜ。頭の悪い連中はヤツのスカウトを蹴ったようだが俺は違う)」
そう、彼はがんだいのスカウトをわざとあっさり快諾したのだった。
マッドマン「(クカカ・・せっかく強くなれるチャンスだってのにそれを棒に振るなんざ、可愛らしい馬鹿どもだぜ。・・おかげでコイツも俺をあっさり仲間に引き入れてくれたしな・・)」
力への渇望・・彼の想いは正にそれだ。
マッドマン「(幸いコイツはお人好しの一面があるからな、甲斐甲斐しく自分の後ろを着いてくる仲間モンスターをムゲには出来ん甘ちゃんな面がある・・だったら余計なコミュニケーションは取らず、無口な変わり者として通して、コイツに連れて行ってもらうのが1番手っ取り早い)」
彼は微かに拳に力を込める。
マッドマン「(せいぜい利用してやるぜ。確かコイツは大魔王とかいう肩書まで持っていやがる・・つまりコイツの元で力をつけりゃ、魔界の連中にも引けを取らねえ力を得られるって訳だ)」
彼は怪しい笑みを浮かべる。
マッドマン「(俺の他にもコイツに力を求めて懇願したり、コイツを利用しようとしてるヤツらもいるっちゃいるが・・見てやがれ、俺もすぐに力をつけてやる)」
彼の中に仄暗い感情が渦巻いてゆく。
マッドマン「(それにはまずコイツの信頼を得るのが先決だ。・・なあに、お人好しなコイツの事だ、献身的な行動を少しばかり見せたら、すぐに俺を信用するに決まってる)」
再び怪しげな笑みを彼は浮かべる。
マッドマン「(せいぜい俺を強くしてくれよ?あるじ殿・・俺があんたを用済みだと思う時まで・・な)」
・・・・・・・・・・
がんだい「なんて事を考えてる訳じゃないだろうし・・ま、とにかく育ててやらないとな」
そう言うとマッドマンはニタァと笑う。
俺は少しゾクッとした。
がんだい「フゥ・・」
マッドマン「・・」
何だか薄ら寒いモノを感じながらも、俺はまた新たな仲間モンスターを鍛える為に動き出すのだった。