~前回までのあらすじ~
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慣れ親しんだ調理職人に別れを告げ、木工職人の道を歩み始めたユウト。
それなりに気合を入れていたこともあり、腕前は着実に上がり、
少しずつではあるものの、☆3商品を作ることができるようになった。
このまま順調に努力を重ねれば、いずれ伝説の職人になれるだろう・・・
そんな甘い考えを持ち始めた頃、
現実は容赦ない壁として彼の前に立ちふさがったのである。
商品が売れない。
当然だ。
冒険者が成長が円熟期を迎えている現在、市場の主流は高レベル装備なのだ。
ぽっと出の新米職人が作ることが出来る程度の装備品など、
たとえ☆3の性能であっても基本的に見向きもされないのである。
伝説の職人になるには装備が売れることが必須であり、
そして高レベル装備を作るためには、相応の職人レベルが必要になる。
では、どうしたら職人レベルを上げられるのか・・・。
一晩悩んだ末に、ユウトはある決意を持ってマスターカンナを訪ねた。
『マスター!お願いします!すぐにでも80装備が作れるようになりたいんです!』
「・・・気持ちはわかりますが、職人の技とは日々の研鑽こそ大切なんですよ」
『そこを何とか!!』
「一朝一夕で身に付くものではありません。どれだけ彫ったか、数がすべてです」
『お願いします!!なんでもしますから!!!』
「・・・・なんでもします、そう言いましたね。」
『はい!!お願いします!!成長できるならどんなことでもします!!』
「わかりました。あなたにそこまで覚悟があるのでしたら、家具ザップをしましょう。」
『家具ザップ??』
「短期間で結果を出す、特別メニューのことです。痛みは伴いますが・・・」
『構いません!!・・・お願いします!!』
「では、現金で200万ゴールド今すぐ用意してください。」
『!?!?』
「本来時間をかけて成長するところを、短期間で結果を出そうというのです」
「これ程度の痛みも受け入れられないのならば、諦めたほうが良いでしょう」
『・・・わかりました。それで、どうすれば・・・』
「これを、作って下さい。」
『・・・?可愛らしいキノコ柄の椅子・・・ですね。これを作れば良いのですか?』
「400個です。」
『!??!?』
「この赤キノコの椅子を400個、不眠不休で作って下さい。」
『不眠不休で!?』
「当然です。先ほど言いましたよね、経験は数だと。それを実践するのです。」
「手にまめが出来ようと、潰れて皮が剥げようと、たとえ腕が折れようとも実践するのです。」
「途中で休むことはまかりません。ひたすらに木工刀を打ち込んで下さい。」
「そして。」
「全てを作り終えたとき、あなたの手には何かが宿るはずです。」
『・・・・・・。』
それから10日。
様々なものを失いながらも、
マスターの課題を作り終えた彼の手には、確かな何かが宿っていたのである。
結果にコミットする。
家具ザップ。