5 魔装、その新たなる可能性②
不意の問いかけではあったが、そもそも装者である自分にとっては造作もない設問のはずである。
魔力を増幅し、攻防速ともに相手を圧倒できる強さ――だが、求められているのは恐らくそのような単純な内容ではない。セバスが考え込むも、
「……ブブー、時間切れ〜。正解は〈装者自身の強さ〉でした〜」
エリミリアの解答を反芻したセバスが、顔を上げて「なるほど……!」と、その真意を理解する。
思えば新型魔装のゼーエンですら、旧型の自分に足元を掬われる形で敗れている。スペックでは完全にセバスが劣っているのにもかかわらず、だ。
「どれだけハイスペな魔装でも最大MPが低かったり、そもそもの戦闘レベルがお粗末さんだったとしたら、命が幾つあっても足りないわよねぇ〜」
ゼーエンとて素人ではない。あのメギウスから直々に新型魔装を与えられていることからも、その戦闘レベルは極めて高いと言えるだろう。それなのに自分が勝てたのは、相手の慢心を利用できたからに他ならない。それほどの強敵と再戦し、そして勝利を確実なものとするためには――
「私自身の……レベルアップ!」
「そ。じゃあとりあえず、セバスちゃんの今のレベルを見てみましょうか。――はい、魔装展開」
「魔装展開!」
輝きを取り戻した魔装がセバスの身を包み、エリミリアがスッ……と間合いを離す。いつの間にか、その手には黒く禍々しい宝石と二本の魔角が特徴的な杖が装備されていた。
「折角直したんだし、また壊さないように気をつけなきゃね。――防御モード、全力でやってみて」
セバスが防御の構えを取り、その全身で蒼穹のオーラが力強い輝きを放つ。エリミリアが杖の先端をセバスに向け、
「じゃ、まずは軽〜く……ドルマ!」
防御を固めている魔装越しに暗黒の衝撃が炸裂し、セバスがうめき声を漏らす。
「ぐっ……!」
ダメージは多少通ったものの、防御に専念すれば防げないほどではない。しかし、エリミリアのドルマが杖無しでキラーマシンの頭部を爆散させていたことを考えると、その威力は魔装防御によって相当減殺されていることになる。
「流石にこの程度はね。じゃ、次……ドルクマ!」
先程のドルマの何倍もの威力の暗黒魔法が、一層防御を固めた全身を覆うほどに膨張し――爆発した瞬間、セバスはたまらず吹き飛ばされていた。
「ぐふっ!」
膝をついて息を荒げるセバスを前に、エリミリアが杖を下ろして歩み寄る。
「これ以上はセバスちゃんの防御を貫通し、魔装の破壊や致命の攻撃につながっちゃうわけね。次はドルモーアかドルマータの予定だったんだけど」
所謂『防御全振り』で、今回の結果である。これが攻撃や回避の最中に受けたダメージであれば、到底この程度で済むはずがない。
(それにしても……〈魔力覚醒〉を使わずしてこの威力、これがエリミリアさんの戦闘レベル!)
現時点での防御限界をその身で思い知ったセバスが魔装を解除し、立ち上がって呼吸を整える。MPこそ相当に消費しているものの、魔女の当初の宣言通り、魔装の破損には至っていない。
「これで私自身のレベルが上がれば、オーラを用いた攻撃力や防御力が飛躍的に向上する……!」
「戦闘術や身のこなしと言えば、やっぱり武道よね。そして、武闘家と言えば――マユちゃんよね」
あれほどの魔力を誇る魔女が、その戦闘レベルを高く評価しているパーティーメンバー、武闘家マユラ。参考までに、冒険者パーティーが基本的に四人編成であることを考えると、同程度の実力者がまだ二人もいるということになる。
「私としては願ったりですが、マユラさんにご迷惑ではありませんでしょうか」
「マユちゃんには後で話を通しておいてあげるわぁ。よければ正午辺りでアポ取っとくけど〜?」
「ありがとうございます、是非お願いいたします」
「いいっていいって、これは私のためでもあるんだから〜……でもそこまで言うなら、また色々買っていってね♪」
今更ながら、メギウス以外で魔装の相談ができる相手が身近に存在する僥倖を深く噛み締めるセバス。今の主であるクロムとの出会いといい、自分は本当に人に恵まれている――そして、セバスは一つの決意を固めた。
(……明日、ここを発とう。私が真に強くなり、全てに決着をつける日が来るまで、プクリポリタウンを過去からの逃げ場にしてはならない)
セバスの横顔を眺めるエリミリアの口角が僅かに歪み、舌先をぺろりと覗かせる。そして、
「私、お食事前にお風呂借りたいんですけどぉ〜」
と、入浴をねだってみせるのであった……。
〜5 魔装、その新たなる可能性③へ続く〜