「夜の神殿に眠れ」の続編をマイタウン三軒を連ねてハウジングすることで表現しています。
その補完で始めたはずの創作ストーリー。
更新は7回目です。今日は3本目です。
興味のある方は前の日誌もご覧ください。
創作とは言え、ネタバレを含みます。ご注意下さい。
エピソード2 「新たな希望」
第二話 「紅き小鬼との遭遇」③
開幕です。
「そうだね。ひとまずこいつを見ておくれよ。」
そう言うと店主に宝石を手渡す。
店主は宝石を鑑定し始める。
店主「半分ってのは本当かい?」
鑑定が終わった時に店主が口元をニヤつかせたのをマリーンは見過ごさなかった。
「そうだね。だが、坊やの顔も少し立てといてあげないと可愛そうだし、その宝石で代金を払おうかね。70万の価値があるようだけど、50万でどうだい?」
店主「…それなら40だ。」
「45」
店主「…いいだろう。商談成立だ。」
二人は握手を交わした。
店主は大忙しで、物資をまとめ出す。
「坊や。終わったよ。」
店主との話が終わり、赤髪の少年の方を向くと仏頂面でこっちを見てきた。
「ちょっと場所変えようかね。」
店主に1時間後に来ると伝え、マリーンは赤髪の少年と別の天幕の裏側へ向かった。
???「あんたなんなんだ!?人の宝石盗んだあげく、自分の買い物に使いやがって!!!」
赤髪の少年は言葉に怒気を乗せてまくし立ててきた。
「損して得取れって言葉知ってるかい?」
マリーンは少年の様子は無視して淡々と話かける。
???「知るか!それより悪いようにしないって言っておいて、結局俺は宝石一個分損したじゃないか!」
「本当ギャーギャー煩い子だね。
…その損したことが今後『得』に繋がるんだよ。」
赤髪の少年は納得できていないのか訝しげな顔でマリーンを見てくる。
「損して得取れってのはね。まぁ語源はちょっと別の意味なんだけど、もっぱら商人の中では投資としての意味がある。…投資って概念はあるのかい?」
???「闘士?戦士の意味か?」
(ボケてるわけでは無さそうだね。投資の概念はないか…)
「投資ってのはね、手元の資金を使って将来大きな利益を得ることかね。」
赤髪の少年は理解出来ていないようでしかめっ面だ。
「さっきの話で言えば、まず向こうに得させる。あの宝石を鑑定した時の商人のニヤケ面見たかい?コレは自分にとって美味い話だと思ったんだろうね。
こっからがあんたにとっての『得』な話だ。
次あの商人のとこに行った時、あの商人は宝石を欲しがる筈だ。美味しい思いをしたからね。そこから先はあんたの腕次第だね。」
???「回りくどいな…イイ物を売ろうとしてるんだ。お互い『益』のある話なんだし、あのまま俺が売りつけていれば宝石一個無駄にすることもなかった!!!」
マリーンは大きなため息を吐く。
「わかってないね。正しいことが良いこととは限らないんだよ。
さっきお互い『益』のあることと言ったがそれはほとんどあんたにとっての『益』だ。相手にとっちゃ知らないガキンチョが売る宝石なんて信用出来ない。そのまま大きな商談になるわけがない。それはリスク過ぎるからね。でも、安くイイ宝石を手に入れた事であの商人は『宝石』に対する信用は獲得出来た。コレで次に繋げることが出来る。
…少しは理解できたかい?」
???「正直よくわからん。だが、俺のやり方以外の方法を知るのは悪くない。」
「そうかい。それじゃさっきの宝石はこの講義の代金ということでありがたく貰っておくよ。」
マリーンは手をヒラヒラさせ、踵を返し、赤髪の少年と別れようとした。
???「ちょっと待て!それとこれとは別問題だ!金は払って貰う!」
赤髪の少年は走ってマリーンの前に来ると指差しながら叫んだ。
「…肝っ玉の小さい男だね。将来大物に慣れないよ?あ~そうだね。それこそさっきの宝石代はあんたが大物になるためにあたしに投資したと思えばいいじゃないか?
それじゃ、達者でおやり。」
マリーンは呆れながら返答し、再度別れようとした。
どうしよう。終わらない…
④へ続きます。